リーダーとして最前線で活躍し続けている女性たちの、ブレない「自分軸」はいかにして作られたのでしょうか。パネリスト3名それぞれのキャリアストーリー、仕事観、リーダーシップスタイルなどに迫りました。

今の充実したキャリアにつながる、忘れられない思い出と転機

 本セミナーに登壇したのは、キンドリルジャパンの松本紗代子さん、ソフトバンクの出口美樹さん、デロイトトーマツコンサルティングの石橋久美子さんの3名。ファシリテーターは、日経BP総合研究所の大塚葉上席研究員が務めました。

大塚葉(以下、大塚) 本日は、リーダーシップ、自分らしいキャリア、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンなどをテーマにお話を伺いたいと思います。最初の質問は、「これまでのキャリアを振り返って」。キャリアを重ねる中で起きた転機や、人との出会い、次のキャリアに踏み出すきっかけになったこと、などについてお聞かせください。

出口美樹さん(以下、出口) 大学卒業後、土木コンサル系企業と外資系企業を経て、2002年にイー・アクセス(現ソフトバンク)に入社しました。これまで、女性が少ない組織に身を置くことが多く、正直なところ働きづらさを感じることもありました。けれど、「女性も男性も関係ないはず」という思いで働いてきました。私には今年大学生になりたての娘がおりますが、彼女を出産したのはイー・アクセスに在籍していたときです。当時、産休・育休を取得したのは、まだ私が社内で2人目という状況で、仕事と子育てを両立するための制度も整っていなかったため、短時間勤務制度を作ってもらうための働きかけなども行ってきました。

<b>出口美樹</b>(でぐち・みき)さん<br> ソフトバンク<br> テクノロジーユニット 5G & IoTエンジニアリング本部 IoT技術統括部 東京IoT第2技術部 部長<br> 大学卒業後、土木コンサルタント会社に入社。02年、イー・アクセス(現ソフトバンク)に転職し、データセンター構築、バックボーンネットワーク構築に従事後、05年より基地局建設・無線網・伝送網の設計構築、品質管理などの業務を経験。18年より新規事業領域を担当。プライベートでは、22年4月より娘が大学生になったことで子育てが一段落し、仕事や趣味を楽しみながら日々を過ごしている
出口美樹(でぐち・みき)さん
ソフトバンク
テクノロジーユニット 5G & IoTエンジニアリング本部 IoT技術統括部 東京IoT第2技術部 部長
大学卒業後、土木コンサルタント会社に入社。02年、イー・アクセス(現ソフトバンク)に転職し、データセンター構築、バックボーンネットワーク構築に従事後、05年より基地局建設・無線網・伝送網の設計構築、品質管理などの業務を経験。18年より新規事業領域を担当。プライベートでは、22年4月より娘が大学生になったことで子育てが一段落し、仕事や趣味を楽しみながら日々を過ごしている

私の転機は、育休からの復帰後に管理職を打診されたときです。初めての子育てでしたし、産休に入る前とは異なる業務に従事していたので、自信がありませんでした。しかし上司が、「やってみないうちにやれないと言ってしまうのはもったいない。まずやってみて、厳しければそのときに考えればいいじゃないか」と言ってくれたのです。その後押しがあったからこそ、今日までキャリアを積んでこられたと思っています。

石橋久美子さん(以下、石橋) 大学で心理学を学んだ後、グローバル系コンサルティング会社、米国投資顧問会社、日系コンサルティング会社を経て、現在はデロイトトーマツコンサルティングに所属しています。私にとっての転機は、第二子の育休中でした。それまでは、仕事と育児に追われる生活を続けながら、「いつまで続けられるか」「いつ辞めようか」と考えることが度々ありました。しかし2度目の育休中にいわゆる専業主婦の生活、かつ一人目の育休時と比べると心に余裕のある生活を満喫してみて初めて、「やっぱり働きたい、クライアントや同僚と活発な議論をしたい、コンサルをやりたい」という気持ちが湧いてきて、これが私の歩みたい道なのだと改めて気付きました。

<b>石橋久美子</b>(いしばし・くみこ)さん<br> デロイトトーマツコンサルティング<br> Cloud Division シニアマネジャー/DEI(Diversity, Equity & Inclusion)活動兼務<br> グローバル系コンサルティング会社、米国投資顧問会社、日系コンサルティング会社を経て現職。幅広い業界のシステム導入にかかる業務移行支援やシステム稼働後の業務改善支援に従事。自身の育児経験から、誰もが仕事とプライベートの両方を楽しめるような制度・風土作りに寄与したいとDEIの企画・運用業務にも注力。面談を通じ、現場の一人ひとりの声に耳を傾ける日々。小学2年生・5年生の母
石橋久美子(いしばし・くみこ)さん
デロイトトーマツコンサルティング
Cloud Division シニアマネジャー/DEI(Diversity, Equity & Inclusion)活動兼務
グローバル系コンサルティング会社、米国投資顧問会社、日系コンサルティング会社を経て現職。幅広い業界のシステム導入にかかる業務移行支援やシステム稼働後の業務改善支援に従事。自身の育児経験から、誰もが仕事とプライベートの両方を楽しめるような制度・風土作りに寄与したいとDEIの企画・運用業務にも注力。面談を通じ、現場の一人ひとりの声に耳を傾ける日々。小学2年生・5年生の母

さらにその後、もう一つ転機がありました。出張中に子どもが熱を出し、入院することになってしまったのです。子どもの体調が良くないことに気付いていながら、出張を断れず、保育園に預けてしまった私。帰りの新幹線の中で、ものすごく後悔しました。これを機に、できないことはできないと断り、子どもとの時間を犠牲にしないよう、効率的に生産性高く仕事をしようと、強く思うようになりました。

松本紗代子さん(以下、松本) 女性が働きやすい会社だと思い、新卒で日本アイ・ビー・エムに入社しました。しかし、私が配属されたのは、50数名の中に女性がたった3人という部署。働き方や生き方のお手本となる女性がいないことで目標を見失ってしまった私は、たまたま一緒に飲みに行った別部署の部長に、「この先のキャリアが描けません」と相談しました。すると、「今後入社してくる女性たちが同じ気持ちにならないように、自分がロールモデルになるという気持ちで頑張ってみたらどうか」という言葉を掛けてくれたのです。そのとき、初めて目標を見つけた気持ちになれました。

<b>松本紗代子</b>(まつもと・さよこ)さん<br> キンドリルジャパン<br> 執行役員/ストラテジックアライアンス事業部長/インクルージョンダイバーシティー&エクイティー担当<br> 新卒で日本アイ・ビー・エムに営業として入社し、グローバルな事業を統括するポジションを複数歴任。21年9月、キンドリルジャパン発足に際し、ストラテジックアライアンス事業部の事業部長に就任。インクルージョン、ダイバーシティー&エクイティーの推進も兼任し、世界最大規模のスタートアップ企業においてその戦略の要となるアライアンス事業の立ち上げと、新しい企業文化推進のための仕組みや制度作り双方の責任を担う
松本紗代子(まつもと・さよこ)さん
キンドリルジャパン
執行役員/ストラテジックアライアンス事業部長/インクルージョンダイバーシティー&エクイティー担当
新卒で日本アイ・ビー・エムに営業として入社し、グローバルな事業を統括するポジションを複数歴任。21年9月、キンドリルジャパン発足に際し、ストラテジックアライアンス事業部の事業部長に就任。インクルージョン、ダイバーシティー&エクイティーの推進も兼任し、世界最大規模のスタートアップ企業においてその戦略の要となるアライアンス事業の立ち上げと、新しい企業文化推進のための仕組みや制度作り双方の責任を担う

それからは辛いことがあっても、「次の世代のために頑張る」と初心に戻れるようになり、そう思える言葉を掛けてくれた部長の方には、今でも本当に感謝しています。