2021年11月16日、日経ウーマンエンパワーメントコンソーシアム加盟企業による勉強会を、リアルとオンラインのハイブリッドで開催しました。G20 EMPOWER日本共同代表の塚原月子さん(カレイディスト代表取締役)とアキレス美知子さん(SAPジャパン人事戦略特別顧問)を講師に迎え、「G20から見る、世界最先端の潮流、グローバル企業事例を学ぶ~23カ国、167のベストプラクティス分析~」と題して行った会の内容を紹介します。
(上) アキレス美知子 一人でも多くの女性を意思決定層へ
(下)塚原月子 12項目でジェンダー格差を分析、可視化せよ ←今回はここ
12のチェック項目で、自社の現状を再認識する
会の後半では、塚原月子さん(以下、塚原さん)とアキレス美知子さん(アキレスさん)が独自に作った「ジェンダーレンズ・チェックリスト」について説明してもらいました。
「2020年に私たちがジェンダーレンズ・チェックリストを作った目的は、管理職や役員の女性比率だけではなく、人材のパイプライン全体をジェンダーの視点から見て『本当に現状のままで大丈夫か』『改善の余地はないか』『改善するとしたらどうすればいいか』とチェックする、『ジェンダーレンズ』の観点を入れることでした」(塚原さん)
「ジェンダーレンズ・チェックリスト」は、左側に12のチェック項目が並び、項目ごとに、右側にある4つの縦列を見ながら、どのステータスに当てはまるかをチェックするためのリストです。
課題を認識し、現状をデータで把握する
塚原さん 1番目の項目「採用人員の男女比」や10番目の「管理職(課長、部長)の男女比」を計測している企業は多いでしょう。しかし、それ以外ではあまり見慣れない項目もあるかもしれません。すべての項目に関していえることは、いきなりKPIを設定するのではなく、まずその項目を「課題として認識しているかどうか」から自社の状況を把握してほしいということです。
課題がある場合は、現状をデータで把握することが必要であるため、次の段階として「データの整備・分析中」というチェック項目を設けています。データがあっても、例えば「男女別のデータは出していない」「人事はデータを持っているが経営層や各部門の部門長には共有していない」という場合もあるでしょう。
データを把握している場合は、次はどの状態に持っていくことが適切かを考える必要があります。そのため、「KPIを設定し、進捗確認中」というチェック項目を設けています。そのKPIの目標値に実態が近づいていたら「改善の成果が出ている」ということになります。このシートを使って、できていたら「○」、できていなかったら「×」と書き込んでみてください。
なお、最初の「課題を認識している」という項目には注意が必要です。一番進んでいるのは、かなり前にこの項目を課題と認識して施策を打ち、既に課題を解決できたことが検証できているがために「課題として認識していない」という意味で「×」を付ける企業です。
社内の選抜チームに女性がいないとき、「なぜ?」という指摘があるか
アキレスさん 具体的な場面を挙げれば、例えば重要なプロジェクトを開始するために、社内の優秀な人材を集めたとき、もしそれが全員男性だったとしたら、「なぜ男性ばかりなのか?」と指摘する人がいるかどうかということです。ジェンダー視点がなく、そうした状態を見過ごしてしまうと、ジェンダーバランスが偏ったままで仕事が進んでしまいます。
「優秀な女性がたくさんいるのに、なぜここに女性社員が入っていないのですか?」という発言がない場合は「課題を認識していない」ということになります。こうした発言があれば、少なくとも「課題の認識はされている」となります。課題として認識はしたが、データはない、という場合はデータを集めて、KPIを設定して進めていく、というステップです。
塚原さん 完璧な正確性を期すことが目的ではなく、回答する側が認識するためのリストなので、回答はだいたいで構いません。