2022年11月10日開催の日経ウーマンエンパワーメントコンソーシアム加盟企業による勉強会。テーマは「日本式ジョブ型」。ジョブ型を採用する国内企業が増加していることを受け、『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』(日経BP)の著者であり、雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんに、日本式ジョブ型と欧米型の違い、従来の日本型雇用制度の長所・短所、欧米型雇用制度の課題、海老原さんが考える理想の雇用制度などについて聞いた。

 勉強会の前段では日本における女性活躍の進み具合についての解説を聞いた。女性のキャリアに関する著書もある海老原さんは、データを交えてさまざまな角度から実態を説明してくれた(詳細は「企業の女性管理職比率30%『2040年に達成可能』」を参照)。

欧米企業のジョブディスクリプションも曖昧

勉強会中のZoom画面の一部。欧米企業で実際に使われているジョブディスクリプション(JD、職務記述書)を見せながら、欧米企業のJDも表記は曖昧であることを説明
勉強会中のZoom画面の一部。欧米企業で実際に使われているジョブディスクリプション(JD、職務記述書)を見せながら、欧米企業のJDも表記は曖昧であることを説明

 本題のジョブ型に関する講義が始まり、「ジョブ型というと、こんな説明をされることがあると思います」と言い、海老原さんは次の記述を紹介してくれた。

「ジョブ型雇用とは、従業員に対してジョブディスクリプション(職務記述書)により職務内容を明確に定義し、労働時間でなく成果で評価する雇用システムである」

 「しかし、こうした説明をうのみにしてはいけません。ジョブディスクリプション(JD)をつくる、職種別コースを設ける、職能ではなく新たな等級をつくる、成果で評価する……。これらを全部合わせてジョブ型と認識している人は多いと思いますが、それは間違いです」

 そもそも、JDはそこまで厳密なものではない、と海老原さんは指摘する。例えばある欧米企業での人事アシスタントのJDを見ると「関連する事務仕事も担当する」「他の人事や一般管理の仕事も、任された場合は行う」と書かれていたり、プロジェクトリーダーのJDに「毎日起こり得る現場での問題を解決する」といった曖昧な表現が使われていたりする。

 また、米国、フランス、ドイツ、オランダなどの欧米諸国を調べた「諸外国の働き方に関する実態調査」(2014年、厚生労働省、三菱UFJリサーチ&コンサルティング)や、外資系企業のエグゼクティブやコンサルファームの話などから、「JDや成果評価は、欧米型雇用制度の本質と関係ないのに、関係しているかのように語り、夢を見ている人がたくさんいると感じる」と言う。