2021年1月26日に開催された、日経ウーマンエンパワーメントコンソーシアムの第4回Input&Networkセッションでは、元・ゴールドマン・サックス証券 副会長兼チーフ日本株ストラテジスト キャシー松井さんを講師に招き、「ウーマノミクスの意義」をテーマに勉強会を行いました。オンラインで開催されたイベントリポートをお届けします。

日本が直面する人口動態問題の解決策とは?

 「ウーマノミクス(womenomics)」とは、女性が働き手として活躍し、消費者として市場をけん引することが経済を活性化させるという考え方で、キャシー松井さんが1999年から提唱しているものだ。これが発表されてからの約20年間で、日本の社会はどう変化してきたのか。今、日本企業が乗り越えるべき課題は何かを松井さんに解説してもらった。

 他の先進国と比べても、日本における高齢化スピードは最も速く、日本政府は2055年までに日本の労働人口は約4割減少すると予測している。経済を成長させる要素は「人材」「資本(お金)」「生産性」の3つで、このうち「人材」が減り、「資本」と「生産性」が変わらなければ、その国の潜在成長率は低下する。

 松井さんが最も恐れているのは、日本の生活水準が低下することだ。「人口動態の変化をいきなり止めることは難しいとしても、何か他にできることがあるのではないか」。松井さんはそんな思いで分析を続けてきたという。

 日本と同じように諸外国も人口動態の問題に直面している。そして、どの国にとっても取るべき選択肢は3つしかない。1つ目は「出生率の引き上げ」、2つ目は「外国人労働者の受け入れ拡大」、3つ目は「労働力率の引き上げ」である。約20年前、松井さんは「1と2は日本では実現不可能ではないが実現に時間がかかる」と考え、3つ目の選択肢について集中的に分析した。

 当時、日本の女性就業率は、先進国の中で低いほうに位置していた。松井さんが2019年に「ウーマノミクス5.0」リポートを発表する際に試算してみたところ、女性の就業率が男性の就業率並みになり、さらに、日本人の女性の労働時間は男性と比べて極端に短いのが特徴だが、その男女の労働時間の格差がOECD加盟諸国の平均並みの比率になった場合、日本のGDPが約15%上がる可能性があることが分かった。

 松井さんがここ2~3年で最も多く聞かれるようになった質問がある。それは「松井さん、この約20年間で日本社会のいったい何が変わったのでしょう。実態は何も変わっていませんよね」というものだ。

2021年1月26日にオンラインで開催された、日経ウーマンエンパワーメントコンソーシアムの第4回Input&Networkセッションで講師として話す、元・ゴールドマン・サックス証券 副会長兼チーフ日本株ストラテジスト キャシー松井さん
2021年1月26日にオンラインで開催された、日経ウーマンエンパワーメントコンソーシアムの第4回Input&Networkセッションで講師として話す、元・ゴールドマン・サックス証券 副会長兼チーフ日本株ストラテジスト キャシー松井さん