20年で日本社会はどう変わったのか

 実態はどうだろう。安倍晋三政権以前から、日本政府は女性活躍に関する政策目標を掲げてきた。約20年前と比べて、ウーマノミクスの観点から、一番大きな変化だと言えるのは「女性活躍状況の『見える化』が実現されたこと」である。

 「これは私の長年の戦いでした」と松井さんは言う。女性活躍推進法が施行された2016年以降、301人以上の従業員を抱える組織、民間、および、公的な組織には、ジェンダーに関する情報の開示義務が課された。

 「これによって情報が見える化される以前は、アナリストとして、個々の組織や産業の状況を横並びで分析することはほとんどできませんでした」(松井さん)。しかし、この法律が施行されて以後、完璧ではないにせよ企業における女性活躍に関する情報が開示されるようになった。そのおかげでGPIF(日本国民の公的年金を運用している世界最大手の公的年金基金)が2016年にESG投資(環境・ソーシャル・ガバナンスに関連する株式指数)として採用した指数のひとつが、「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」になったのだ。松井さんがその指数を作ったインデックス会社の代表に聞いたところ、「日本の女性活躍推進法の規定による情報開示がなければこの指数を作ることはできなかったし、GPIFも投資できなかったはずだ」と言っていたそうだ。

 勉強会で松井さんは、「ウーマノミクスにまつわる3つの通説」というテーマで詳しい解説を展開し、その後、約1時間の質疑応答・ディスカッションタイムが設けられた。

 「執行役員の女性比率を上げることに対し、現場では『なかなか難しい』という空気が漂いがちだ。この事態をどう打開すればよいか」「役員の人事評価軸に女性活躍支援に関する項目を入れたほうがいいと思うが、現場からの抵抗がある。可視化することが効果的な評価項目が他にあるか」「ダイバーシティ&インクルージョンの重要性を社員に腹落ちさせるためにより効果的な発信の仕方を教えてほしい」など、具体的、かつ、切実な質問が数多く寄せられた。松井さんの前職での経験を踏まえた具体的なアドバイスのおかげで、納得度の高い対話が行われた。

 業種や企業規模の違いはあれども、ダイバーシティ経営を実行する難しさを、各企業は痛切に感じている。地道な女性幹部育成や、性別によるバイアスを取り除く努力など、日経ウーマンエンパワーメントの勉強会を通じて今後も発信していく。

Input&Networkセッションには、日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト加盟各企業の役員や人事担当者らが参加できる。回を重ねるごとに参加者同士の交流も少しずつ進んでいる
Input&Networkセッションには、日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト加盟各企業の役員や人事担当者らが参加できる。回を重ねるごとに参加者同士の交流も少しずつ進んでいる

文/小田舞子(日経xwoman編集部)

【日経WEPコンソーシアム】
日本経済新聞社・日経BPは、2020年春に「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト(WEP)」を始動させました。ジェンダー平等は日本の組織の成長に不可欠との信念を持ち、実践しているキーパーソンにインタビューしています。さらに、大型イベントの開催、勉強会&ネットワーキング、国連機関のUN WOMENとの連携など、当コンソーシアムで発信しています。ぜひこちらのサイトをご覧ください。