2022年4月の東京証券取引所再編に伴い、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化が求められる中、「取締役会の女性比率」に注目が集まっています。2022年2月10日に開催した、日経ウーマンエンパワーメントプロジェクトの「社長会」では、加盟企業の社長・役員など14人がオンラインで集まり、「取締役会の多様性がもたらす企業の成長~コーポレートガバナンス時代の女性人材育成~」をテーマにディスカッションを行いました。リポートをお届けします。
女性を「お飾り」で入れても意味がない
「日本企業は荒波の中にいる。何かを得るには何かを捨てなければならない、コンフリクトな(相反する)状況での経営判断が求められている」――。
2022年2月10日にオンラインで開催した、日経ウーマンエンパワーメントプロジェクトの「社長会」は、東京都立大学教授の松田千恵子さんによる講演で幕を開けた。講演で松田さんは冒頭のように語り、「予測不可能な時代には、強力なマネジメントと、それを監督するガバナンスの強化が求められる。マネジメントとガバナンスは合わせ鏡の関係にあり、2021年6月に改訂が公表された東証のコーポレートガバナンス・コードには、経営者がやるべきことのヒントが詰まっている」と指摘した。
ガバナンスで重要な役割を果たすのが取締役会だ。取締役会に、女性や外国人など多様な人材を登用することで、意思決定の確度が高まることが期待される。「しかし、女性の社外取締役を『お飾り』で入れても、業績には何の効果もない」と松田さん。自身の調査研究を基に、「内部育成された女性執行役員がいるほうが、業績・株価ともに好影響がある」との見解を示した。
「若者を中心に、人事のあり方、なかでもダイバーシティに厳しい目が注がれている。企業にいる人材の半分が女性であり、女性の人材育成を進めるのは必要なことだ」と松田さんは指摘した。
講演に続いて、参加した経営者たちが「自社の取締役会の多様性の状況」について、プレゼンを行った。「弊社の女性取締役は、お飾りではない」「2022年の春から女性取締役比率を30%に高める予定だ」「女性役員へのパイプラインづくりが大きな課題だと認識している」といった、意欲的な発言が次々に飛び出し、会は盛り上がっていった。

●アフラック生命保険 代表取締役社長 古出眞敏
●MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス 取締役会長 柄澤康喜
●エリクソン・ジャパン 代表取締役社長 ルカ・オルシニ
●エリクソン・ジャパン 代表取締役社長 戦略事業担当 野崎哲
●KPMGコンサルティング 代表取締役社長 兼 CEO 宮原正弘
●日本ユニシス 代表取締役社長 平岡昭良
●マネックスグループ 代表執行役 COO 兼 CFO マネックス証券 代表取締役社長 清明祐子
●メットライフ生命保険 代表執行役 会長 社長 最高経営責任者 ディルク・オステイン
【参加した役員】(同)
●伊藤忠商事 執行役員 人事・総務部長 的場佳子
●大和証券グループ本社 常務執行役 人事担当 兼 最高健康責任者(CHO) 白川香名
●東京海上ホールディングス 執行役員人事部長 グループダイバーシティ&インクルージョン総括 鍋嶋美佳
●東京センチュリー 取締役 専務執行役員 馬場高一
●日興アセットマネジメント 常務執行役員 ステファニー・ドゥルーズ
●ファイントゥデイ資生堂 執行役員 人事本部長 石井早苗