多様性推進に関する悩みが続々と

 続いて、松田さんへの質疑応答とディスカッションが行われた。参加者からは、ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組み方から、日本型人事制度の問題点、経営者育成の方法、コーポレートガバナンス・コードへの対応まで幅広い質問・意見が挙がり、経営者たちが日ごろ抱える悩みを思わず打ち明ける一幕も。当日挙がった意見・質問と、松田さんの回答を、いくつか抜粋して紹介したい。

経営者A 多様性は企業のサステナビリティーにとって非常に重要だ。社内の推進体制づくりにおけるポイントは。

松田さん(以下、松田) 担当部門に任せるのではなく、経営戦略として推し進めるべきだ。推進部門の人が一生懸命やっても、経営戦略とつながっていなければ、投資家にとってはきれいごとにしか聞こえない。ただ、最新の時流は担当部門のほうがよく知っているので、連携が大切だ。

経営者B 日本には生え抜き経営者が多く、外部から優秀な経営人材を登用することがなかなかできない。旧来の人事システムを改め、労働市場の流動化を進めなければ、本物のダイバーシティは進まないと思う。

松田 多様性には2つある。1つはジェンダーなどの「属性」の多様性。もう1つは「スキル」の多様性だ。スキルの多様性は、あればあるほど業績にプラスだといわれている。解決策としては中途採用だ。ただ、中途採用者を1人か2人、入れただけでは社風は変わらない。女性役員もそうだが、全体に占める比率が2割を超えてくると会社の風土に影響を与える。労働市場と社内の人事改革、両方から進めないといけない。

経営者C 社内で28~38歳の女性の退職が多いことに問題を感じている。具体的な策を打ち出さなくてはいけないが、なかなか進んでいない。

松田 まずは男女問わず全体の労働環境を整える。さらに女性の場合は出産前後の社員が一番大変なので、そこを集中して支援する。育児休業から復帰後に前と同じポジションに戻すのは当然だ。メンター制度も有効ではないか

経営者D 経営層の男女比を均等にすることは、早急に実現したい。まずは社員の意識改革から始めたい。

松田 トップの意思決定と実行は変革に不可欠だ。若者はダイバーシティネーティブなので心配ないが、問題はミドルエイジだ。男性だけでなく、女性も長く働き続けるとおじさんの論理に染まってしまい、「岩盤層」になってしまう可能性がある。ぜひ上下からサンドイッチ方式で、直すべきところを直してほしい。

経営者E クオータ制についてどう思うか。

松田 女性に「ゲタをはかせる」ことへの反対意見もあるが、今の状況は「男性が高いゲタをはいている」とも言える。なんとなく男性目線で作ってしまった人事評価基準を、見直すときに来ている。2013年に政府が成長戦略に女性活躍推進を盛り込んでから、もうすぐ10年。それなのにまだ女性役員が少ない状況を考えると、クオータ制の導入を検討してもいいと思う。

 積極的に挙手する参加者と、的確で鋭いアドバイスを繰り出す松田さん。参加者からは、「ダイバーシティとガバナンスの関係がよく理解できた」「社員の皆が腹落ちして進むことが大事だと再認識した」「今まで以上にダイバーシティを楽しめるような企業にしていきたい」といった声が挙がった。ジェンダー平等経営に積極的な14人の経営者たちによって熱い議論が交わされ、予定した2時間はあっという間に過ぎていった。

構成/久保田智美(日経xwoman編集部)