平均点の差で「全員数学が得意」とは誰も思わない

 四本さんは、「その差は一般化できるか」について、もっと分かりやすい例を提示。「ある学校でテストをしたら、数学の平均点は1組のほうが高く、英語の平均点は2組のほうが高かった、という結果があったとします。この結果を見て、『この生徒は1組だから数学が得意なはずだ』『2組の生徒は全員英語科に進学すべきだ』と思いますか?『1組の生徒は数学脳、2組の生徒は英語脳だ』なんて思わないですよね。こういうことはまず考えないのに、なぜか日本では、同じことを男性・女性でやってしまっているわけです。2つのグループに平均値がある場合でも、その背景に非常に大きな個人差があると認識することが大切です」

 次に、タクシーの運転手やミュージシャンの例を挙げながら、脳が環境や学習などで柔軟に変化することを示した四本さん。「私自身の研究では、脳の形だけでなく、脳の使い方もダイナミックに変わることが分かっています。つまり、行動や思考が原因であり、結果として脳が変わるのです。この『変わる』という脳の特性のことを『可塑性(かそせい)』と呼んでいます」

「社会や教育、行動や思考が原因で、結果として脳が変わる。この視点を意識することが大事」(四本さん)
「社会や教育、行動や思考が原因で、結果として脳が変わる。この視点を意識することが大事」(四本さん)

よく聞くジェンダーステレオタイプも、科学的根拠はなし

 続いて、四本さんは「以下の中で、聞いたことがある説は」と参加者に呼びかけ、その場で簡単なアンケートを実施。

1.男性は空間認知能力が高い
2.女性はよくしゃべる
3.数学は男性のほうが得意
4.男性のほうが成績のばらつきが大きい
5.男性のほうが競争的
6.男性と女性は脳に違いがある

 集計すると、「男性は空間認知能力が高い」は92%、「女性はよくしゃべる」は90%、「男性と女性は脳に違いがある」は87%、「数学は男性のほうが得意」は70%前後の人が「聞いたことがある」という結果に。これらについて、四本さんは冒頭で挙げた「科学的根拠、出版バイアス、一般化、因果関係」の視点に照らし合わせ、すべてにおいて「そうとは言えない」ことを解説した。

 例えば、「女性はよくしゃべる」については以下のように説明。「いろんな研究者が、人が1日に話す言葉の数に性差があるかを調べたが、研究者によって結果はバラバラ。職業や1日の生活パターンなどが結果に関係していましたが、性別が原因で話す言葉の数が変わるという因果関係は見いだされませんでした