2023年1月18日に開催された「日経ウーマンエンパワーメントコンソーシアム」加盟企業による勉強会。「理系・デジタル分野の女性不足の問題点と、解決のために企業ができること」をテーマに、2人の識者が登壇。理系・デジタル分野のジェンダー平等にまつわる課題や最新動向についてレクチャーを行った。

研究チームのジェンダーバランスが評価対象に

 最初に登壇したのは、日本大学常務理事、NPO法人ウッドデッキ代表理事 渡辺美代子さん。「理系分野のジェンダー平等、課題と進捗」について講演を行った。

勉強会当日は投票システムの「Slido」を使用し、リアルタイムでアンケートや質問の受け付けを実施。大いに盛り上がった。写真左の最上段が渡辺さん、上から2番目がもう1人の講師、上田さん
勉強会当日は投票システムの「Slido」を使用し、リアルタイムでアンケートや質問の受け付けを実施。大いに盛り上がった。写真左の最上段が渡辺さん、上から2番目がもう1人の講師、上田さん

 渡辺さんは、国内の科学技術・研究分野における女性の少なさについて紹介した後、米国スタンフォード大学のロンダ・シービンガー教授の言葉を引用する形で、女性活躍が進む欧州において行われている3つの戦略的アプローチを紹介した。

 1つ目は男女のバランスが取れた研究チームを編成するなど、女性や社会的地位の低い人々の数を増やすことに焦点を当てた「数値の改善」。2つ目に、大学などの組織改革によって誰もが働きやすい環境を整備する「組織の改革」。そして3つ目の「知識の改新」では、性差に着目して技術革新を目指す「ジェンダード・イノベーションズ」の概念を紹介した。これらの3つは密接に関係しており、科学技術分野のジェンダー平等を進める上で、同時に行うことが大切だという。

 例えば欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会は、男性14人、女性13人と男女比のバランスに配慮された編成で、委員長のフォンデアライエン氏をはじめ、イノベーション・研究・文化・教育担当のリーダーも女性が務める。なかでもEUが総額10兆円をかけて実施する研究公募プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」では、2021年からジェンダーバランスへの考慮とジェンダー分析の組み込みが義務化、評価対象になるなど、ジェンダーの視点を科学に取り入れる動きが高まっていることが紹介された。