女性の社会進出に向かった北欧と、「専業主婦化」が進んだ日本

 続いて、立命館大学政策科学部教授の大塚陽子さんが「ジェンダー平等がもたらす北欧社会の持続性について」をテーマに講義を行った。北欧ではなぜジェンダーギャップが小さいのか。大塚さんは、その理由として北欧諸国が、「北欧福祉モデル」という共通理念に基づき、政策や制度が実施されていることを挙げた。「国家が社会に対して大きな責任を持っている。完全雇用、長期失業者対策による高就業率という目標があり、手厚い訓練や再就職の機会が保障され、給料格差も小さい。つまり、やり直しが利く社会だ

「北欧諸国は互いに競い合いながらも協調してジェンダー平等を推進してきた」(大塚さん)
「北欧諸国は互いに競い合いながらも協調してジェンダー平等を推進してきた」(大塚さん)

 なぜそれが可能なのか。「社会民主主義で高福祉・高負担のため、国民と国家の間に強い信頼関係がある」と大塚さん。さらに、「ジェンダー平等の実現は、国民の幸福度の高さだけでなく、子どもの貧困率の低さにもつながる」と強調した。女性が経済的に自立しやすいほか、「北欧には、親と切り離した子ども個人への支援策がある。小学校から大学まで学費は無料、大学生は生活支援金という形で生活費が国からもらえるため、『子どもの貧困は親の経済力次第』とならないところが、子どもの相対的な貧困率を低くしている」。

 日本のジェンダーギャップ指数は先進国の中でもとりわけ低い。世界トップの北欧と、いったいどこで差がついたのか。大塚さんは歴史を振り返り、こう話す。「1973年にオイルショックが発生し、世界経済が大きな混乱に陥った。今後、どう生き延びるかという方向性を各国が模索する中、北欧の女性は社会進出を選んだが、日本では逆に、女性が『専業主婦化』した。ここが転換点だったのではないか」

 今後の日本への示唆として、「長期的な展望を持ち、個人のQOL(生活の質)を大切にすること。やり直しが利く柔軟性を持ち、福祉・教育には投資を惜しまない。こうした北欧の考え方を取り入れることも必要ではないか」とアドバイス。「ジェンダー平等の効率性と効果を知り、ジェンダー平等推進をきっかけにしながら、それ以外の環境も包括的に整えていくことが大切」と締めくくった。

 講義終了後は、質疑応答が行われた。「ジェンダー平等は普遍的なものだと、効果的に示す方法を教えてほしい」という質問に対し、ヨハネソン氏は、「対話はもちろんだがロールモデルが非常に大切。アイスランド初の女性大統領は16年間務めた。制度をつくるだけでなく実現まで落とし込むことで、国民の考え方が確実に変わる。男性も参画して行うべきだ」と熱く回答した。

 「アイスランドの教育には、ジェンダーバイアス(性的偏見)を排除するための施策があるか?」との質問には、「ジェンダー平等に関する教育カリキュラムがある。実際に私と息子たちとでは、結婚や人生に関する考え方が大きく違う」と、自身の体験を基に話した。

 多くのコメントや質問が活発に飛び交い、ジェンダー平等の先進国である北欧に対する関心の高さがうかがえた勉強会となった。

文/西尾英子