2022年3月17日にオンラインで開催された「日経ウーマンエンパワーメントコンソーシアム」の勉強会では、駐日アイスランド大使のステファン・ホイクル・ヨハネソン氏と、立命館大学政策科学部教授の大塚陽子さんが講師として登壇。アイスランドがジェンダー平等の実現のために行ってきた効果的な施策や、経済成長との関連性、さらに北欧諸国の特徴である「北欧福祉モデル」についてのレクチャーを受けました。そのリポートをお届けします。
男女平等が経済成長のキードライバー
「こんにちは! ゴーザンダイイン」。勉強会の冒頭、日本語とアイスランド語の両方で挨拶した駐日アイスランド大使のヨハネソン氏。アイスランドは世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数ランキングにおいて13年連続で1位を獲得。さらに国連機関の世界幸福度ランキングや、民間調査の平和な国ランキングでも上位をキープしている。
ヨハネソン氏は、そうしたことを実現できているのは「政府の施策や、民間の草の根活動の結果」だとし、「男女が平等であればあるほど幸福度が高く、企業や国全体に対しても良い影響をもたらすことが研究の結果で証明されている」と述べた。
実際に2015年から2018年にかけて、アイスランドの国内総生産(GDP)は前年比4%以上の成長率を記録。2019年は2.4%と落ちつき、2020年は新型コロナウイルス禍でマイナス成長となったが、2021年には再び4.3%の成長率を見せている。「OECD(経済協力開発機構)の報告書でも、男女平等が経済成長のキードライバーだということが示されている」とヨハネソン氏は強調する。

では、どんな政策を掲げることで男女平等を実現できたのか。その代表格が、「充実した児童福祉制度」だ。現在、2歳児の95%が保育所に入園可能で、その費用の85%を自治体が負担している。さらに、「男性が育児休業を取れるようになれば構造的な差別もなくなる」という理念のもと、母親、父親がそれぞれ6カ月の育休を取得でき、さらに6週間を夫婦で共有できるという。その結果、「アイスランドの男性育休取得率は86%を実現しています」とヨハネソン氏は胸を張った。
アイスランドが現在のような男女平等社会にたどり着くまでには、女性たちが力強く声を上げてきた歴史がある。1975年にアイスランドの9割の女性たちが男女平等を求めてストライキを行ったのをきっかけに、1980年代には世界で初めて、民主的に選出された女性大統領が誕生。2013年には、従業員50人以上の上場企業役員の4割以上を女性にする法律が施行。順守してないことが発覚した場合、罰金が科せられるという。また、18年には男女の同一労働・同一賃金を義務化する法律を施行しており、企業に証明を義務付けしている点も画期的といえるだろう。