長時間労働の常態化を覆したトップの本気

 次に、アクセンチュアの組織風土改革「Project PRIDE」を行った背景を増永さんが説明した。「以前のアクセンチュアでは長時間労働が常態化。社外からの評判が悪化し、多様な人材の採用が困難に。人材不足になると、長時間労働が続きますし、それにより疲弊した社員が退職するなど、さまざまな課題がありました。このままではアクセンチュアに未来はないという強い危機感を持ち、絶対に変えなくてはいけないと、現在の社長(代表取締役社長 江川昌史氏)が立ち上げたのが、『Project PRIDE』です」(増永さん)。

 全社員のリモートワーク環境促進、週3日、計20時間以上の短日短時間勤務も可能なフレキシブルな勤務制度、18時以降の会議の原則禁止など、さまざまな施策を展開。結果、「1人当たりの残業時間は1日平均1時間に減少。離職率は実施前の約半分となり、有休取得率も向上しました。また、女性比率は35.5%(2021年3月時点、改革前は22.1%)に上昇、新卒と第ニ新卒の女性採用比率は47%と、ほぼ男女半々に」(増永さん)。

 最後にアクセンチュアの組織風土改革のフレームワークについて、増永さんは次のように話した。「I&DもProject PRIDEも、基本的なフレームワークにのっとって進めています。

アクセンチュアのI&DとProject PRIDEの施策は、このフレームワークにのっとって実行される。
アクセンチュアのI&DとProject PRIDEの施策は、このフレームワークにのっとって実行される。

 4つの象限に分かれており、まず第1象限は方向性の提示と効果の測定です。リーダーが変革の方向性をしっかり定め、メッセージを発信する。何を指標にするか確定し、継続的にモニタリングをします。第2象限はリーダーのコミットメントです。経営者だけでなく、執行役員や本部長クラスの社員たちが責任を持って改革に取り組むようコミットメントを引き出す必要があります。

 第3象限は仕組み化・テクノロジー活用です。制度やルール、仕組みを変えるといったものが該当します。最後、第4象限は文化・風土の定着化です。社内での表彰制度やイベントや啓発キャンペーン、実践している社員の声などの定期的な情報発信などを継続する必要があります」。

 このフレームワークをぐるぐる回しながらI&D、Project PRIDEを進めるアクセンチュア。「スマートに施策を展開しているように見えるかもしれないが、試行錯誤の連続です。いまだにサーベイでは社員から厳しいコメントが上がることもある。終わりなき道のりであり、常に道半ばだと痛感しながらも、半歩ずつでも前に進んでいけたら。社員にとって働く価値ある職場にしたいと思い、取り組んでいます」(増永さん)。

勉強会には加盟企業の人事や広報など、約50人が参加した
勉強会には加盟企業の人事や広報など、約50人が参加した

構成/岩井愛佳(日経WOMAN編集)