2022年10月28日に行われた、日経ウーマンエンパワーメントコンソーシアム加盟企業による勉強会のテーマは「女性社外取締役」。女性活躍推進の指標の1つである「女性役員比率」を上げるために、多くの企業で起用が進んでいる女性社外取締役の背景と選出の舞台裏、失敗例、そしてダイバーシティ分野で果たす役割について、人材サービス会社パーソルキャリアの執行役員で、社外取締役紹介をはじめとする外部人材の活用を行う総合ブランド「HiPro」で編集長を務める鏑木陽二朗氏に聞いた。

 2022年6月、東京証券取引所の新市場がスタートして初めての株主総会が終わり、多くの企業で女性社外取締役が就任した。最大の理由は、1年前の21年6月、東証と金融庁によりコーポレートガバナンス・コード(CGC)が改訂され、女性社外取締役の増加を促す項目が盛り込まれたため。具体的には「女性の活躍促進を含む多様性の確保を推進すべき」(原則2-4)、「十分な人数の独立社外取締役を選任すべき」(原則4-8)、そして「独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべき」(補充原則4-11①)といった内容だ。

 鏑木氏は「CGC改訂によって、社外取締役を探すときに経営陣の人脈でメンバーを探して起用するといった考えをやめて、本当に活躍してもらうためにどんな人に、何を担ってもらわなければならないのかを企業が真剣に考えるようになった」と指摘する。

ESG、海外投資家の要求、育成の怠慢…さまざまな理由が背景に

 女性社外取締役のニーズの高まりは、CGC改訂だけが理由ではない。ESG(環境・社会・企業統治)の観点から、ガバナンスに女性の見方が求められていること。また、海外投資家から多様性、ジェンダー平等を要求されていることも大きな理由だ。そして、日本企業には女性の経営層を今まで育ててこなかったため、社内での登用が間に合わないという事情もある。

 勉強会では、女性社外取締役のニーズの高まりを背景に、社外取締役の選定から就任に至るまでのステップが大きく変化した点について鏑木氏が解説。選定基準の厳格化や、取締役候補の早期選考が加速していること、また就任までのフォロー体制の変化などの“舞台裏”を明らかにした。

「女性社外取締役の起用は“事業継続”のための重要イシュー」と話すパーソルキャリアの鏑木陽二朗氏
「女性社外取締役の起用は“事業継続”のための重要イシュー」と話すパーソルキャリアの鏑木陽二朗氏