仕事のために家族をないがしろにしていいのか

人事部・シニア・マネジャーの吉川眞知さん(左)
人事部・シニア・マネジャーの吉川眞知さん(左)

 もう一つ、山本さんの働き方を語る上で大事なエピソードがある。それは、2017年10月に1カ月、チームに所属しつつ、祖母の介護を優先しながら生活を送ったことだ。寝たきりになった祖母に寄り添うため、週4日有給休暇を取得し、残りの1日は半日程度、スカイプ会議に参加してプロジェクトの進捗確認を行った。もとは介護休暇を取得することも検討したが、「プロジェクトにも思い入れがあり、できればチームを抜けたくなかった」という。

 アクセンチュアの社員には1人に1人「キャリアカウンセラー」という中長期的キャリア構築の相談相手(職位が上の社員)が付くが、山本さんは介護と仕事を両立したいという思いをキャリアカウンセラーに相談。「プロジェクトのスケジュールを見通し、いつなら介護を優先した働き方ができそうか、そのために何を前倒しで進めるべきかを整理して上司に相談してみては」と助言を受けた。助言通りの準備をして上司に相談したところ、「そのプランでやってみよう」と上司も顧客との調整に動いてくれ、休暇を取得することができた。

 祖母と一緒に過ごしたこと以外にも、この1カ月間は山本さんにかけがえのない意味をもたらした。「家族を大事にせずに仕事をしていていいのだろうかという思いがそれまではずっとあったんです。この期間のおかげで、仕事で責任を果たしたうえで、家族と一緒に過ごす時間を持ちつつ、自分の精神的なバランスを取る方法を学んだと思います」

 仕事もしたい。“私らしい”人生も送りたい――。その両方をかなえる制度を備える会社で、伸び伸びと働く山本さんの笑顔はとてもパワフルだった。

取材・文/小田舞子(日経doors編集部) 写真/稲垣純也