セクハラにボーダーラインなんて必要ない
セクハラ加害者のミッチも、決まり文句のように「同意の上だった」と主張します。また、「ワインスタイン氏の事件以降、私も私も……と被害を訴える女性が次々と出てきているが、彼女らはやり過ぎだ」と、Me Too運動についても猛烈批判。自分都合のこの考えには嫌悪感しかありませんが、性行為の強要でもない限り、セクハラだと認定されないことが多いのも悲しい事実。しかし本当に過激な行為だけがセクハラなのでしょうか。
それについて、このドラマでは明確に「NO」と告げています。加害者が思う以上に被害者は深く傷ついていて、このドラマに登場するセクハラ被害者のように、生きていくことさえつらいと感じる人だっています。被害者が受けるダメージは、当人でしか測れないのです。どんな発言であれ、行為であれ、相手が女性であれ、男性であれ、受け手が不快に思ったらそれはすべてセクハラなのだと、このドラマで描かれる一連の出来事が教えてくれます。
どんなささいなことでも被害に遭った人は「仕方ないか……」と諦めるのではなく、「これでいいわけがない!」と声を上げる権利がある。違和感に目をつぶることが平和の証しでは決してないのです。
Me Too運動は私たちの中でまだ続いていくのかもしれません。業界の実態を暴き、セクハラ問題の根深さを明らかにしたこのドラマが、一人でも多くの女性たちの背中を押すきっかけになることを心から願っています。
Apple TV+オリジナルシリーズ。シーズン1を独占配信中。
文/伊藤ハルカ イラスト/六角橋ミカ