信頼関係を築いた「伴走ノート」
でも近藤選手は諦めなかった。「必ず出場する!」という彼女の信念が日野さんを本気にさせ、消えかかっていた走ることへの情熱が再燃したという。「練習メニューはもちろん、近藤さんの発言や状態をノートに記録し、毎日メールのやり取りをして信頼関係を築きました。走り方をアドバイスするときも、彼女が不安になるようなマイナスな言葉は避け、やる気になる言葉を探して伝えるようにしました」
合宿や遠征先で生活を共にし、どこまでサポートしていいか分からず落ち込んだりもしたが、自身の練習を終えた後に近藤選手と20キロを走るような日々を乗り切り、見事リオの切符を獲得。日野さんも自身の種目で自己ベストを更新し、長いトンネルから抜け出した。

「最初は、障害者を支えるという意識が強かったけれど、近藤さんの夢や言動がいつしか私の支えになっていました。彼女のひたむきな思いに心を動かされ、『未奈ちゃんにサポートしてもらいたい』と言ってもらえたことが本当にうれしくて。人が成長するには、相互支援や相互信頼が大事だと学びました」

大学院ではソーシャルサポート*を学びながら、女性や学生の伴走者を増やすべく、講演活動などを行ってきた。そして新たなパートナー、井内菜津美選手と支え合いながら、東京パラリンピックを目指す。
*:人と人の結びつきを示す概念、社会的支援

日野未奈子さんへの一問一答
Q1
ストレス解消法は?
A
シューズを洗うこと。ランニング用シューズに限らず、毎週末2〜3足のシューズを手洗いしています。きれいになったシューズを履いて出かけると、ストレスがリセットされるんです!
Q2
落ち込んだときの克服法は?
A
「汗をかく」「好きなものを食べる」「時間をかけて煮込み料理を作る」こと。料理は創作するより、レシピ通り忠実に作ることが快感です。(笑)
Q3
最近のマイブームは?
A
米ぬかを使ったスキンケア。京都の新洞食糧老舗の「京小町ぬか」を使用するようになってから、肌がツヤツヤになる効果にハマっています。
Q4
ケガ防止のために気を付けている点は?
A
食事と睡眠に加え、毎日湯船につかることを心がけています。あとは、決して無理をしないこと! アスリートですが。(笑)
Q5
今、一番関心があることは?
A2021年東京オリンピックとパラリンピック、25年大阪万博です。いずれにもなんらかの形で携わりたいという強い思いがあります!
構成・文/高島三幸 写真/HAL KUZUYA
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