自虐で生きやすく、強くなれた

―― その他に、コンプレックスにとらわれなくなる方法はありますか?

LiLiCo 先手必勝で、自分からコンプレックスを告白する手もありますよ。

 例えば、私は父がスウェーデン人で、母が日本人。ルーツの一方が海外なので、日本人よりも遺伝子的に太りやすいんです。だから太ったときには、「最近おなかがポッコリしてきました! 遺伝子が太りたくて仕方がないみたいです!」と自虐ネタに昇華する。すると不思議なもので、誰も「最近太ったよね?」とは指摘してこないんですよね。

 それ以外にも、なぜか日本では「ハーフはみんなきれい」と思われることも多くて、それもコンプレックスだった。でも、「残念なハーフもいます!」と自虐ネタを言えるようになってからは、すごく楽になりました。

 もちろん、無理に自虐ネタにする必要はありません。ただ、私の場合はコンプレックスを笑いで返せるようになって、生きやすくなったし、強くなれた

 人を傷つけるためにコンプレックスを指摘してくる人もいるかもしれないけれど、そういう人は、きっと「自分のことが大嫌いな人」。自分自身がコンプレックスだらけだから、その反動で人を攻撃したいんだと思う。だから、自分のコンプレックスを隠さずに言える強い人に、あえて指摘してくる勇気はないはず。

 それに、コンプレックスを気にしているのは自分だけだったりもする。人は案外気にしていないものだから、本当はコンプレックスについて「考えない」のが一番。コンプレックスは、考えればそこに「ある」ものになるけれど、考えなければ「ない」ことになる。だからコンプレックスに執着せずに、コンプレックスを自分の中から消していって。その代わりに、人から言われた褒め言葉は素直に受け取って。そうして、あなたがあなたであることを大切にしてほしいと思っています。

 続く下編では、18歳で日本に来て抱えたコンプレックス、最近の新しい挑戦、明るさの秘訣などを聞きました。

下編「LiLiCo 挑戦を続ける理由 『我慢の美学はない』」では、次のストーリーを展開

■日本語をしゃべれない状態で、18歳で日本へ
■日本語コンプレックス、だからこそ今でも学ぶ
■50歳の初挑戦で感じたコンプレックス
■自分の人生を生きたいから、「我慢の美学」はない
■マイナス思考だけど、ポジティブに見える理由

取材・文/青野梢(日経xwoman doors) 写真/本人提供