いかに自分を「白く見せるか」で悩んだ20代
―― 「王様のブランチ」では、地黒であることを生かして活躍できた部分もあるそうですね。
福井 そうですね。アクティブな役割を期待して起用していただいていましたし、アウトドアのロケをたくさん担当できたのは、地黒のおかげだと思います。でも、「王様のブランチ」でも地黒コンプレックスを感じることはありました。
今でも恥ずかしくて忘れられないのが、飲食店に訪れて料理の味や感想を伝える「食レポ」の仕事をしたときのことです。茶色い壁の店だったのですが、壁の色と私の肌色が同化して、顔がうまく映らないことが判明して。私がはっきり映るように照明を明るく調整すると、他の出演者や料理が白くなりすぎてきれいな映像が撮れないので、それ以降私は「茶色い壁はNG」になりましたね(苦笑)。
―― 地黒に対するコンプレックスは、どう克服されたのでしょうか?
福井 20代の頃は、克服するというより、肌の色が黒いことを必死に隠そうとしていました。「自分をいかに白く見せるか」に必死だったんです。
当時の写真を見ると、自分の肌の色よりも白いファンデーションを厚く塗って、顔の色が変になっていて(笑)。CMのオーディションで「撮影までに日焼けは戻せますか?」と聞かれたら、白くなるわけがないのに「3週間後には白くなります」と言って、アカスリに行ったこともあります。もちろん、アカスリで本来の肌の色が変わることはないと分かっていましたが、それくらい必死でした。
夏も長袖を着て、紫外線100%カットの高価な日傘を使い、自分を少しでも白く見せる努力をし続けました。「地黒だ」と言いたくなかったので、徹底的に白くなる方法を調べて、実行して、とにかく自分にできることは何でもやりました。
―― 気持ちに折り合いがついたタイミングやきっかけはあったのでしょうか?
福井 「王様のブランチ」でご一緒していたメイクさんやディレクターさんに、「なんでそんなに白いファンデーション塗るの? 今のままがいいのに」と言われたり、肌の色を褒めていただけたりして、徐々に気持ちが変わっていきました。
色白の人から、「日焼けすると肌が赤くなってしまうのがつらい」という話を聞いたり、「福井さんは日焼けをしても私のように肌が赤くならないので、適任だと思って屋外ロケに誘いました」と言ってもらえたりして、「地黒が羨ましい」と思っている人がいると分かったのも大きかったです。
海外に行くと、ビーチで女性たちが積極的に肌を焼いているのを目にすることもあったので、視野を広げてみれば「地黒がかっこいい」という考え方もあると知り、徐々に「地黒は自分の個性」だと自認できるようになりました。