この連載では、各分野で活躍している人たちに「人生を左右した決断」についてインタビュー。今回は、講談社の週刊漫画雑誌『モーニング』で人気連載中の作品『ハコヅメ ~交番女子の逆襲~』の作者、泰三子(やす・みこ)さんの「決断」に迫ります。
(上)300万部突破のハコヅメ 元警察官が漫画を描いた理由
(下)ハコヅメ作者 警察辞め退職金が底をつきパートも考えた ←今回はここ
警察官の日常と仕事を、コミカルかつリアルに描いて累計300万部を突破した漫画『ハコヅメ ~交番女子の逆襲~』(以下、ハコヅメ)。作者の泰三子さんは、警察官として10年勤務した後に退職し、漫画家に転身した異色の経歴の持ち主です。なぜ警察官を辞めて専業漫画家の道を選んだのか。ストーリー作りに生かされた妄想力とは? 担当編集者・田渕さんにも参加してもらいながら話を聞きました。
漫画経験ゼロからのスタート
編集部(以下、――) 上編「300万部突破のハコヅメ 元警察官が漫画を描いた理由」では、警察官になった理由や漫画を描こうと思ったきっかけを伺いました。捜査で似顔絵を描いたり、防犯チラシに4コマ漫画を描いたりはしていて、警察官の中では絵がうまいほうだったそうですが、泰さんはそもそも漫画を描いた経験はないんですよね?
泰三子さん(以下、泰) はい。モーニング編集部の新人賞に応募するまで、漫画を描いたことはありません。警察官になってからは、10年間毎日追われるように仕事をしていたので、漫画を読むこともほぼありませんでした。
―― それでも漫画を描いたのは、防犯の知識を広めたり警察官の採用を増やしたりするためには、「漫画が一番伝わりやすいと思ったから」だと上編で言っていましたよね。当時は1ページ漫画を描いてモーニングの新人賞に応募したそうですが、なぜ漫画雑誌に送ったのですか?