「カッコよさ」の理由

―― 少数民族とドラァグクイーンの「カッコよさの共通点」。何でしょうか。

ヨシダ 華やかな衣装や個性的なメークには、確かに心を惹かれます。でも、本質はそこではない。「立ち姿」がカッコいいのだと思います。

 フォトグラファーとして仕事をしていると感じることなのですが、「立ち姿」だけは偽れない。私の目にアフリカの少数民族が美しく映るのは、彼らが自分自身に誇りを持っていて、美しいと信じているからだと思うんですよ。

 ドラァグクイーンも同じ。力強くてユニークな装いの後ろ側には、社会の中でマイノリティーとして苦しみながらも生き抜いてきたこれまでの時間がある。生きざまを背負っている。そのドラマ性が、魅力的なんです。

 彼ら・彼女らは、いわば私の「ヒーロー」ですね。

「ドラマ」を伝えきるために

―― クイーンたちをより深く理解するための仕掛けとして、今回は写真という手段にとどまらず、被写体になった18人にヨシダさん自らがインタビューをした動画も制作しました。

ヨシダ はい、まさにその「ドラマ」の部分を伝えきりたくて、新しい手法に挑戦しました。写真を通してだけでも、作品の受け手がクイーンたちから得られるものは大きいと思うのですが、「感覚的」にではなく、彼女たち自身の言葉で、より具体的に伝えたいと考えたんです。

 なぜ、こういう装いをしているのか。どうして私たちは、「彼女たち」を美しいと感じるのか。そこに思いを馳せることで、今いろいろな場所で生きづらさを感じている人たちが、少し楽になるためのヒントを得られるのではないかと考えました。

『DRAGQUEEN -No Light , No Queen-』より
『DRAGQUEEN -No Light , No Queen-』より
撮影とインタビューの様子。ドラァグクイーンたちのパワフルな言葉も詰まっている