「屈折」は悪いことじゃない

―― 撮影の中で、特に印象に残ったクイーンの言葉はありますか。

ヨシダ 1つを選ぶのはなかなか難しいですが、あるクイーンの話が特に心に残っています。

 「彼女」は、ドラッグ(薬物)に依存していた過去を持っていました。けれど、長く苦しい道のりを経て、「ドラァグ」(女装)に救われた。「人生には最悪なことがたくさん起こる。でもその後には、必ずいいことも起こると信じるの」――。よく言われる言葉ではあるけれど、苦労を重ねてきた「彼女」の口からその言葉を聞いたからこそ、私もそれを信じたいと思えました。

 クイーンたちは、例えるなら宝石のような人たちだと思います。宝石が美しいのは、削られた多面体から光が差し込み、石の中で幾重にも屈折して輝きを増すから。人間の「立ち姿」も同じだと私は思います。

 「屈折している」というと、悪いことのように思われるかもしれない。でもそうではなくて、生きづらい「今」の積み重ねの中で、人間も磨き上げられていく。作品を見た皆さんに、そんなことも感じてもらえたらうれしいです。

『DRAGQUEEN -No Light , No Queen-』より
『DRAGQUEEN -No Light , No Queen-』より
ヨシダナギ作品集『DRAGQUEEN -No Light , No Queen-』(ライツ社)
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取材・文/加藤藍子(日経doors編集部)