2019年9月20日、エデュケーション・ニュージーランド(留学プロモーションを行う政府機関)のチーフエグゼクティブ、グラント・マクファーソンさんに日経doors編集長の羽生祥子がインタビューを行った。「女性が活躍しやすい国」として知られる同国の教育、キャリア構築、留学の魅力について話を聞いた。
(上) なぜニュージーランドは女性首相が3人も誕生したのか
(下) 「羊の国」から脱却 ニュージーランドのIT企業立国 ←今回はここ

国を挙げてスタートアップ、ベンチャー企業を支援
日経doors編集長・羽生祥子(以下、羽生) ニュージーランドには羊や酪農など牧歌的なイメージがある一方で、実はすごくとがったIT先進国という一面があります。ベンチャー企業やスタートアップ事業が盛んなのはなぜですか?
グラント・マクファーソンさん(以下、マクファーソン) それについては、教育システムの話に戻りますね。新興のベンチャーやスタートアップが盛んなのは、学生時代の学び方に工夫があるからなのです。テストや暗記を重要視するのではなく、多様性にあふれた学び方ができるよう、教師たちは柔軟性に富んだ授業を行っています。
例えば、物理を学ぶとき、教室で学ぶ場合もあれば、森の中で授業を行うときもあります。森の中では物理だけでなく、数学も学べますよね。こうした工夫をすることで、生徒の創造性、独創性を高めることができます。ニュージーランドには中小企業がたくさんありますが、これらはほとんど個人が始めたもので、イノベーティブかつ創造力に満ちています。
羽生 ニューテクノロジーへの補助金をはじめ、政府からの支援も充実<していますよね。
マクファーソン こうした意欲のある人や企業に対して、政府や地方自治体が投資政策を出しており、最大都市のオークランドでは、「カラハーン・イノベーション」という政府機関が、主にハイテクやSTEM分野での起業家を支援しています。首都のウェリントンでも、ウェリントン地方自治体の出資する「クリエイティブ・HQ」と呼ばれる公的機関が、ベンチャー企業や政府機関向けに体系立てたイノベーション・プログラムを提供しています。
他の都市でもいわばビジネス道場やインキュベーターが学びの場を提供したり、支援したりしています。そこでは起業家マインドのある人を支援できるような環境を整え、ステップアップを応援できるのです。