新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、マザーハウスは全国にある店舗のうち30店舗以上、休業している。「影響は甚大」。だが、「こんな時だからこそ、私には、大切な仕事がある」と言う、マザーハウス代表取締役兼デザイナーの山口絵理子さん。――山口さん、今、どんなことを考えていますか?(取材は2020年3月10日)

世界が揺れている。私も日々、揺さぶられている。
私たちは世界とつながりながら、バッグを作っている。ジュエリーを作っている。服を作っている。
新型コロナウイルス感染拡大による影響は甚大で、毎日毎夜、苦渋の決断の連続だ。
きょうは2020年3月10日。私たちのメインの生産地、バングラデシュでは、他社の工場のほとんどは休業になってしまったらしい。私たちの工場も稼働を短縮しようと決めた。働く時間が減ると、その分お給料が減ってしまうから、スタッフも不安になる。
こういうとき、私がやんなきゃいけない一番大切なこと。それは、「自分の言葉で、正直に、伝えること」。
方針が決まった日、さっそくオンラインで工場のみんなとつないで、話をした。
「大震災のときと同じで、これからすごく大変な時期になると思う。だから、みんなの協力が必要になる」
2週間後に予定していた毎年恒例のピクニックもやむなく中止。総勢250名と家族で行くバスツアーを楽しみにしていたスタッフたちは、がっくりと肩を落としていた。