昨年(2019年)、マザーハウスの山口絵理子さんはパリ進出を決めた。初めての土地で新規事業を立ち上げるために日本とパリを行き来し、現地スタッフの採用にも奔走。そんな中で出会ったのが、25歳のフランス人女性、ポーリーンだ。「彼女の言葉や姿勢から、学ぶことがたくさんある」――。山口さんは、新しい重要メンバーでもある彼女に、ある方法で「期待」のメッセージを伝えていた。

今日は、ポーリーンについて話したいと思う。
ポーリーンは、私が昨年の秋、パリで見つけた新しいビジネスパートナー。まだ25歳で若いのだけれど、200人を超える応募の中から私がほれた感性と度胸の持ち主。生まれは郊外のノルマンディーなのだと聞いて、彼女のバックグラウンドに興味を持った。
ノルマンディーといえば、第2次世界大戦中に史上最大規模の上陸作戦が行われた地。彼女の母親は、定期的にアメリカ人兵士を自宅に受け入れて支援活動を行ってきたのだそう。ソーシャルに対する深い理解と、郊外出身者ならではの努力をいとわない姿勢が、彼女には染みついているのだと、直観した。
前回「山口絵理子 『日本の謙虚さは美しくないと怒られた』」でお話ししたように、パリ人は「実力以上」に魅力を語るプレゼンテーションがとても得意。
自分の経歴や実績がいかに素晴らしいか(すなわち、「それに見合う報酬を求める」ってこと!)という主張が多い中、彼女は純粋な野心から湧く「未経験のことに挑戦してみたい」という思い、そしてマザーハウスの価値観への共感を語ってくれた。
彼女なら、自分の力を過信し過ぎず、何も用意されない環境下でも、タフに柔軟にサバイブしてくれそうだな。
そんな期待感で仲間に迎え入れた。
でも、マザーハウスの将来にとって、とても重要な意味を持つパリでの新規事業の責任者に、現地の25歳を採用したということについては、反対意見をたくさんもらった。