羽生 東京大学社会科学研究所の調査では、女性の6割が配偶者の選択基準として「年収」を上げています。一方、男性の6割は女性の「容姿」を求めています。1980年代ごろ日本でも盛んになったジェンダー論の「結婚は、男のカネと女のカオの交換」という40年前の構図から何も変わっていない。がっくりですよ。

川上 女性は男性と比べて稼ぎにくいという構造的な問題がありますよね。例えば、パートであくせく働いても、たいした稼ぎにならない。男性と同じようにバリバリ働いて収入がある場合は、実家から親を呼び寄せて子どもの面倒をみてもらうというようなサポートが必要になる。結局自分が働いても合理的ではない、という計算から男性に「お金」を求めてしまう。

経済を握った方が支配的になっていく現実

川上 でもね、それが結果的に男性にとって都合のいい女性になることを、自ら選択していることになってしまう。夫に「お金は自分が稼ぐから、君は母親として子どもたちと一緒にいてくれないかな」なんて言われて、キャリアという荷物を手放して家庭に入ることになる。ただ家事、育児は自分1人でこなさなくてはならないし、「働きたい」という気持ちがあったとしてもそれにふたをする。子どもの受験があったり、おけいこがあったりととても忙しくて、頑張っているけれど誰からも報われない。しかも人間というのは稼いで経済を握っている側が、絶対に支配的になっていく。これは男でも女でもそうだと思います。

 いつしか何のためにこれ(家事や育児)をやっているんだろうと限界が来ると思います。自分が苦しいと思ったとき、その理由を理解できる知性が重要になってくる。この苦しい状況ってなんなのか。どうしたらそれが解決できるのか。フェミニズムは、その問題を理解するための大きな力になります。