お店と農業、どちらが儲かるか
坂本さんはそのとき、「お店と農業、どちらのほうが売り上げが立つのか」をじっくり考えた。
売り上げ500万円を稼ぐのに農業であれば、田んぼの面積と取れるコメの数量からすぐに計算できる。しかし、お店で500万円を稼ごうとすると何年かかるか分からない。であれば、農業をしよう――。坂本さんはそう決意した。
翌2017年4月、店を閉めて専業農家になった。18歳で「農家になる」と家族の前で宣言してから、24年後のことである。
「自分の限界」を知ったから決断できた
「周りの人の協力や支援を受けて、自分の天職だと思えるセラピストの仕事を腹いっぱいやらせてもらいました。でも売り上げは伸びていかない。つまり、そこで自分の限界を知ったんです。お店を始めていろいろなことに気づけて、今、結果としてここに立って農業をしている。この『気付きのもと』がお店だったんです」
お店を開業し、そしてわずか3年で閉めるという決断をしたから、農業と真剣に向き合うことができた。一つの道をやり切った坂本さんだからこそ、新たな扉が待っていた。