フランスでは社会的適応による卵子凍結を認めるか議論がなされている
フランスでは、現在、医学的適応(主に悪性腫瘍の治療の過程で、将来の妊孕〔にんよう〕力〔妊娠する力〕が損なわれる危険がある場合に、前もって卵子を凍結しておくこと)による卵子凍結は認められているが、社会的適応(健康な人が将来の妊娠に備えて卵子を凍結しておくこと)による卵子凍結は認められていない。しかし、生殖補助医療を規制する「生命倫理法」の改正に向けた議論が2018年から始まっており、独身や同性婚を含むすべての女性に対し、人工授精などの生殖補助医療を認めることに加え、卵子凍結の社会的適応についても議題の一つとなっている。
「同じ欧米でも、国によって方針は大きく変わります。イギリスは卵子凍結を規制しつつも認めるというリベラルな姿勢。アメリカに至っては無法地帯ともいえる状態です」
「そもそも精子の凍結は比較的行いやすいため、その歴史は長いのですが、卵子の凍結となると全く話が変わってきます」と神里さん。精子と受精させ、受精胚にした段階で凍結しておけば、解凍して母胎の子宮に戻したときに着床する可能性は高いが、卵子を未受精のまま凍結すると、凍結や解凍がうまくいかなかったり、精子を注入しても受精に至らなかったりする場合も多い。受精しても、その後、着床して無事出産に至る可能性は高くない。