理由がないことはしない

柴田 プロジェクトの成功にこだわっていることや、その実績を見ていただけると思ったので、こちらからの営業活動は必要ないと思いました。

 営業活動をしない代わりに、一つひとつのプロジェクトにはいつもこだわりぬきました。どんな小さなことであってもやる理由のないことはしません。そこは厳しく守り続けています。なぜやるのか、どうして必要なのか、明確な理由があることだけ実施しつづけるようにしています。

実績が顧客を呼んでくれると考えているから柴田陽子事務所には営業部門がない
実績が顧客を呼んでくれると考えているから柴田陽子事務所には営業部門がない

 例えば予算一つとってもそうです。クライアントに与えられた予算をうのみにするのではなく、まずは自分の頭でその予算の妥当性を整理する。なぜその予算なのか、クライアントの立場に立って具体的に考えるんです。

 例えば飲食店だったら「一時的なブームで終わらせずに、オープン後3年間で投資を回収しなければならない。そういうお店を作るためには、この予算が適正なのだ」と妥当性が見えてきます。そして初めて「ではその予算をどう使うのか」を考えていく。

 ここまで相手の立場に立つということを徹底しているのは、私の若い頃の経験に由来しているのかもしれません。

 柴田陽子さんの入社当時の話は後編柴田陽子 父の会社が倒産 気付いたお金の価値に続きます。

取材・文/都田ミツコ 写真/北山宏一