日本発テクノロジーが差別的になる可能性も
ジェンダーに限らず、日本社会に多様性が無いというのは最近話題になったニュースからも読み取れる。それはデータプラットフォームを提供するスイスのStreamr社が、AI開発などを行う日本のDaisy 社との提携を解除したというニュースだ。
事の発端はDaisy 社の代表である大澤昇平氏がツイッターで「中国人は採用しない」(現在は削除済み)などと差別発言したことにある。これに対しStreamr社は「こうした差別発言をするDaisy 社とはパートナーシップは維持できない」といった内容の声明を発表し、実際に提携を解消した(編集部注:その後、大澤氏は一連のツイートについて「当職が言及した、特定国籍の人々の能力に関する当社の判断は、限られたデータにAIが適合し過ぎた結果である『過学習』によるものだった」と謝罪)。
人工知能というのは、人間が構築するデータベースや知識がベースとなっているからこそ、開発に関わっている人の考え方やモラルが少なからず反映される。テクノロジーや技術が世界から承認されている日本でこうしたことが起きたのはとても残念に思うと同時に、このままではテクノロジーまで差別的になってしまうのか、と怒りも感じる。
STEM、いわゆる理系の分野には女性がまだまだ少ないといわれている。私自身、事業でテクノロジーに関わっているため、ブロックチェーンやビッグデータ、人工知能などの分野では特に女性が少ないと肌で感じている。そんな男性が中心的にいる業界で、Streamr社がパワフルな声明を出したことは差別を寛容しないということを示すことにない、他の企業もモラルや自らの理念などが問われることにもなると思う。ジェンダーギャップを無くすためにも、こういう行動は不可欠だ。
一人ひとりが、ジェンダーギャップがどうしてできてしまうのか、客観的に見た上で問題意識を持っていきたい。また、意思決定の場にいる人、影響力のある人が、自分の考えを表示をする事により、社会は少しずつ変わっていくのではないか。
最後に、ジェンダーギャップランキングに関していつも疑問思う点も述べておきたい。ジェンダーギャップランキングで数値化されていくデータの中でセクシュアルマイノリティーや「女性」や「男性」に当たらない人口はどうなるのか。ジェンダー平等というのは、ジェンダーに関係なく、平等な権利や選択肢があることだと思うが、社会で一番取り残されがちである「セクシュアルマイノリティー」がどう生きやすくなるか、働きやすくなるか、というのも同時に考え、並行して取り組んでいかなければいけないと思う。
文/山本和奈 写真/花井智子