目指すはあくまで男女平等 男性にも居心地の良い社会でありたい
実際に起業を経験してみて驚いたことがあります。
「女性起業家として」とか「ミレニアル世代の女性のロールモデルとして」という枕ことばを付けられる機会が想像以上に多いことです。赤字垂れ流しで、つい先日も、めでたくネット銀行の法人口座開設の審査に落ちたばかりですが、こんな認知度ゼロの弱小企業経営者としてこうしたお声かけにはありがたさしかありません。
ただ、自分自身が「女性起業家」であることを意識したことは特にないのに、女性という枕ことばをつけて、あたかも「守られている」「特別に応援されている」かのようにしないと、私は起業したことを認めてもらえないのかなあと思うことが度々ありました。
「女性起業家」の肩書がないと耳を傾けてもらえない、ニュースに取り上げてもらえない。私の事業が仮に男性起業家によるものだったら状況は全然違ったのだろうか……。
事業内容以前に、女性であることが価値になる。日本の今の女性エンパワーメントの風潮は、ビジネスシーンでは時折行き過ぎているようにも感じます。これまで男性がメインだったビジネスの場に女性が進出していくわけなので、もちろん女性はエンパワーされてしかるべき対象なのですが、女性がエンパワーされすぎると今後は男性の居心地を悪くしてしまったり、それによって女性が萎縮してしまう悪循環を招く可能性もはらんだり……。
連日報道に出てくるような、「セクハラ」「モラハラ」「パワハラ」「マウンティング」ばかりの「最低男」って、全体から見ればきっとマイノリティ(だと強く信じたい)。時代の変化を正しく把握できていない「無知なマイノリティ」が大きく取り上げられるたびに、男女関係なくいい仕事をしたいマジョリティの男性たちは、口を閉ざさなくてはいけなくなってしまうということはないでしょうか。あくまで私の個人的仮説ですが。
今後、日本で女性管理職が増えて、ジェンダーギャップ指数が上がると嬉しい。それに伴い(前述した)「最低男たち」のリテラシーも上がっていくことを切に願う。でも、大切なのは、選ばれた女性管理職本人が、自分の能力や成果の賜物だと心から胸を張れるような増やし方だと思うのです。管理職や起業家に「女性」という枕ことばが付かなくなったとき、本当に男女平等な社会に近付いていると言える気がします。
メディアを正しく味方に付けて
今回の報道で私がもう一つ気になったこと。
「ジェンダーギャップ指数過去最低!」「女性の社会進出、世界から大きく遅れる!」「男女格差!」
見出しだけ見ると、「ほんとどうしちゃったんだ、日本」と思ってしまうほど、メディアによって煽られているように感じてしまったのです。自分で少し調べたり、誰かと会話したりしてみると、事実は半歩先で待っていました。ジェンダーギャップ指数は、純粋な男女比率に注目したランキング調査であること、日本で特筆すべきは政界での女性進出の遅れであること。それらは全て自分で能動的に調べて初めて分かった事実でした。
メディアでの報道では、時として、「事実」の濃度が、派手な見出しによって薄まってしまう場合があると感じます。2020年の日本のジェンダーギャップ指数が、2019年の結果を踏まえてどう変わっていくのかということと同じくらい、メディアの報道の仕方やそれに対する私たちのリアクションもこの1年でどう変わっていくのか、とても楽しみに思えてなりません。
文/森本萌乃 写真/窪徳健作