自分を磨く副業の始め方
多様な働き方が広がる中、企業では副業解禁の動きが進み、テレワークが一気に普及したことで「会社員の副業」がより身近になりつつある。副収入が主な目的ではなく、将来のキャリアを見据えて、本業・副業・自分の3者にメリットのある新しいチャレンジやスキルアップの場として副業制度を活用する人も。どのように機会をつくり、複数の仕事のバランスを取りながら意欲的に取り組んでいるのだろうか。大阪在住で、平日夜や週末に北海道・京都の仕事を手伝う小谷美帆さんの成功事例と両立の工夫を紹介する。
大手製薬会社・ロート製薬の広報として働きながら、北海道十勝郡浦幌(うらほろ)町の木材製品加工販売会社・BATONPLUS(以下、バトンプラス)で取締役を務める小谷美帆さん(30歳)。浦幌町は東京23区よりも広大な面積のうち、約7割が山林を占める自然豊かな町。1970年代には約1万人いた人口が今は5000人弱と過疎化が進む中で、次世代を見据え官民一体となった独自の町づくりの手法が注目を集めている。
バトンプラスは、浦幌町の地域活性化プロジェクトの1つとして、2018年6月に設立されたベンチャー企業。北海道で大正時代から続く林業を営む事業者とロート製薬の社員、東京のIT企業社員の7人で立ち上げ、現在8人のメンバー全員が副業で事業に携わっている。
ロート製薬では、2016年2月に副業を解禁。ベンチャー精神と行動力を備える人材育成を目指し、20代・30代の若手社員が発案した同社の副業制度「社外チャレンジワーク制度」は現在、1500人ほどいる社員のうちの約80人が利用。「許可制」ではなく「届け出制」で、町おこし事業への参画のほか、地ビールの醸造やカフェの運営、プログラミング教室の運営など、さまざまな事業で社員が能力を発揮している。
「私は培ったスキルを生かして、新しいことにチャレンジするために、副業制度を活用しています。もともと北海道との強い接点があったわけではありませんが、バトンプラスの設立前にロート製薬の若手有志メンバーと十勝へ訪れる機会があり、浦幌町の素晴らしい教育への取り組みに共感しました。同時に主要産業である林業の厳しい現状を知り、『今の仕事での経験を地域活性化に役立てたい』という思いで、会社の立ち上げ時から経営に参画。出資金は貯蓄から捻出しました」と小谷さん。本業の就業時間外を活用し、バトンプラスの取締役として広報・人事部門を担う。
広報のスキルやテレワークを活用した事業運営経験を生かし、今年からは新たに出身地である京都府舞鶴市の町づくり事業に参加。「本業と副業、どちらにも良い影響がある」という副業に出合うまでのアクションや副業を通じて得られたもの、両立の工夫について次のページから紹介していく。