全5回で実践 視野が広がるSTEM思考法
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1課題発見から解決まで「科学的な思考」を身に付ける
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2田中彩諭理「困った」から課題発見、解決のための行動は
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3原綾香「好き」が「あったらいいな」の具現化アクション
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4「初心者でもできる事は探せる」入社間もない2人の挑戦
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5米国で鍛錬されたSTEMな社長が伝授 若手に必要な事←今回はココ
「STEM思考法」特集の最終回を締めくくるのは、STEM分野の研究者として日米で長年活躍し、現在はジョンソン・エンド・ジョンソン ビジョンケアカンパニーで社長を務める海老原育子さんです。STEM思考法を発揮する前提として、若手ビジネスパーソンがどのようなスキルを付けるといいのか、海老原さんに経営者の立場からお聞きしました。
海老原さんは、新卒入社した住友スリーエム(現スリーエムジャパン)で光学系システムやヘルスケア事業の開発などに従事した。就職先にメーカーを選んだのには「自分が研究開発に携わった製品が工場で作られるところを見たい」「その商品を消費者から評価されたい」という夢があった。
日本と米国で研究実績を重ねている最中に、ビジネスの基本を学ぶ必要があると一念発起し、1997年から約6年かけて研究生活と米MBAスクールの二足のわらじを履いてMBAを習得した。そして転職を経て2016年に、社長というトップマネジメント職に就く。
海老原さんがMBAを取ろうと決意したのは、現場のエンジニアたちと、よりビジネス寄りのマーケティング部門の人たちの間をつなぐ「通訳」になろうしたから。「神業」とまで思われる優秀な技術者たちのモノづくりの技術を市場のニーズに生かしていくマーケティングの重要性を、そのとき理解したという。
経営者の多くは、数理的、科学的に物事を考えて課題解決に当たる「STEM思考法」を身に付けている。STEM分野で長年活躍してきた海老原さんには、経営者の目で、日経doors世代を含め、若手ビジネスパーソンに対して持ってもらいたいと思うスキルがある。
価値を生み出す二つの力がないと「もったいない」
「会社にいるからには、仕事で自ら価値を生み出す必要があります。自分で何かに価値を見いだし、これには価値がある、と会社にきちんと説明できないと生き残れません。ことに米国の会社では『(私はこの職場で)何をしたらいいか分からない』なんて言ったら、瞬殺。その場でクビになってしまいます(苦笑)」
そのためには「二つの力」が必須だと強調する海老原さん。論理を組み立てる「論理力」、それを周りに納得させる「表現力(コミュニケーション)」だ。
海老原さんの見るところ、論理力を身に付けている若手社員は多い。一方、周りや上司を説得する表現力が未熟だという。表現力が不足しているというだけで価値を生み出せず、潜在力のある事業や製品を世に送り出せないのは「本人にとっても、世界にとってももったいない」。