毒親じゃないけど時々しんどい、母との関係
生き方の選択肢が今よりも少なかった母親世代から、抑圧された感情の受け止め役となり、過去の無念や果たせなかった夢を託されたキャリア女性たち。歳を重ねるにつれて、自分なりの対処法を身に付けたり、親の事情への理解が深まったりしたものの、母親との関係づくりに人知れず悩んでいる人もいる。今回、母娘関係に悩んでいる20代・30代の女性3人が集まり、本音座談会を実施した。

■Aさん(31歳、コンサルティング会社勤務)
家族構成:父、母、1歳年上の姉
現在:独身、一人暮らし
悩み:母からの比較・否定がトラウマに
教育熱心な優秀な母から姉と比較され、「なんでできないの?」と事あるごとに言われて育ったのがトラウマ。自分の意見を押し殺してきた期間が長く、判断や決断が苦手。恋愛や仕事などの人生の選択に対して、「親がどう思うか?」を基準に選んでしまう。
■Bさん(26歳、IT企業勤務)
家族構成:父、母
現在:既婚、夫と二人暮らし
悩み:バリキャリ母との性格の不一致
ハングリー精神が旺盛なバリキャリ母に対し、マイペースな性格のAさん。趣味嗜好はもちろん、キャリアや家族に対する考え方が正反対なのに、母が自分の考えを娘に押し付けてくる。距離を置きたいが、今年10月に結婚した後も変わらない母に戸惑っている。
■中西須端化さん(29歳、文筆家・PRライター)
家族構成:父、母、5歳年上の兄
現在:独身、一人暮らし
悩み:感情の起伏が大きい母との衝突
腎臓に重い病気を抱えた兄、とある宗教に入信した母という複雑な家庭環境で育つ。母が感情的になる瞬間が分からずにおびえる思春期を過ごし、心身の不調も経験。芸大進学を志すも、母親の反対で立命館大学に進学した。言葉に救われ、文筆業をライフワークに。
日経doors編集部(以下、――) 皆さんのお母さんはどんなタイプですか?
中西須端化さん(以下、中西さん) 母は今60代半ば。育ってきた時代や環境が私とは違い、教育方針や仕事選びなどの価値観が全然違うんです。最近はスマホを持つようになり少しずつ変化がありますが、情報の取り方を知らず、情報を得る速度も遅く、世間知らずなところもあったと思います。
タイプとしては、真面目で教育熱心、明るくエネルギッシュ。感情の起伏が激しく、ヒステリックなところがあります。私の兄は生まれつき腎臓に病気を抱えて、20歳まで生きられないんじゃないかと医師から言われていた状況だったこともあり、母は余計に「いい親であらねば」という呪縛(じゅばく)が強くて。おそらく、「いい子に育てないといけない」というプレッシャーがあったんですよね。
―― 中西さんへのしつけや教育も厳しかったそうですね。
中西さん 母親自身も実母から厳しくしつけをされて育ったり、自分の弟を若くして亡くしたことが原因で大学を中退しなければならなかったり、諦めてきたものが多かった。だからこそ、自分が果たせなかったことは娘にという思いが無意識にもあったんじゃないかと思います。体の弱い兄の分も、元気な私への期待が大きかった。最近になって母親にも発達障害の気があったのではないかという話をするようになり、納得できるようになったのですが、子どもの頃は、母の怒りの地雷がどこにあるかが全く分からずにいつもおびえていました。さっきまでご機嫌で「女の子は汚い言葉を使っちゃだめよ」って言っていたのに、急にブチ切れて、「お母さんのほうが、むちゃくちゃ悪い言葉を使ってるじゃん!」って感じで……。矛盾がすごく多い人でしたね。
次のページから、日経doors読者による母娘関係アンケート(2020年11月13日~12月11日実施。有効回答数104人)も公開します!