2018年度の文化庁調査によると全国16歳以上男女のうち「1カ月に1冊も本を読まない」人は47.3%。一方で「もっと読書したい」と思う人は60.4%も! ビジネスパーソン、政治家など、旬な人から「人生を変えた1冊」を教えてもらいます。
2019年の締めくくりに 『人生を変える1冊』
2019年の締めくくりに 『人生を変える1冊』
年末年始に読んでおきたい「お薦めの本」を紹介する特集。今回は、日経doors編集部員がdoors世代の頃に読み、人生が変わったという一冊を紹介。今回は後編です。
人生で一番読み返した、転身の背中を押してくれた本
日経doors編集部・田中裕康の人生を変えた本は、
『ノルウェイの森』
(村上春樹著、講談社)
本は子どもの頃からそれなりに好きなほうで色々読んでいました。18歳か19歳の頃、友人に薦められて読んだのが『ノルウェイの森』です。
村上春樹の本を読むのはこれが初めてだったのですが、それまで読んできたどんな本とも物語の構成や表現、比喩、登場人物の描き方が違う。衝撃を受けたような感覚を覚え、夢中になって読みました。何度も読み返しました。もしかすると、人生で一番読み返した本かもしれません。
当時、僕は公務員になろうと思って公務員試験向けの専門学校に通っていたのですが、実は、公務員になるのをやめて作家になりたいと思うほど、ハマりました。
すぐに自分に物語を作る才能のかけらもないことに気づき、断念しましたが、公務員になってからも心のどこかでその思いはくすぶっていて、結果的に辞める一因になったことは否めません。
物語は作れなくても、文章を書くこと自体は苦手ではなかったので、「じゃあライターになろう」と無職で上京したのが24歳の頃です。若かったですね。
でも、そのときの決断は今も全く後悔していません。むしろ今の自分の芯になっていると思っています。