他人に怒りをぶつけられたときは、どうする?
では、自分ではなく他人が怒っているときには、どうすればいいのでしょうか。自分に向けられた怒りの場合、大切なのはやはり、「怒りにまかせた衝動的な行動を取らないこと」なんだそう。
「反射的に対応して、『怒り』に『怒り』で応戦しないように『怒りのピーク6秒をやり過ごす対処法』を実践してみてください。そうしてイライラのピークをやり過ごし、冷静さを取り戻した後に、状況に応じて『自分がどうしたいのか』を考えて行動するといいでしょう」
例えば、いつも怒ってばかりの上司に、明らかに八つ当たりをされたという状況なら、「はい。分かりました」と言ってその場は丸く収め、相手のイライラが静まったところで、「先ほどの件ですが、○○の部分は○○のようにしたいのですが、よろしいでしょうか」と、時間を空けて報告・相談するなど。
「こうした場合には、『なんで上司はいつも怒っているんだろう』『この前も理不尽なことで怒られた』と、相手が怒っている原因を考えたり、過去の怒りを思い出したりする人も多いと思います。しかし、他人のイライラの原因や過去にとらわれていても、自分の怒りの解決にはなりません。アンガーマネジメントは、『未来』に目を向けて解決策を考えるトレーニングです。『どう対応する?』と自分に問いかけ、未来(問題解決)に目を向けることで、現実を変えていくことができるのです」
一方、自分に直接向けられた怒りでなくても、職場で不機嫌な人を見ているだけで、自分までイライラしたり、落ち込んだりする人も多いのではないでしょうか。こうした場合には、「他人の怒りはコントロールできない。相手の怒りは相手のもの。自分の感情ではない」と、意識することが大切なんだそうです。
「前編で、怒りには『周囲に伝染する』という性質があることをお伝えしました。とても強いエネルギーを持つ感情なので、自分までイライラしてくるというわけです。もし他人の怒りに影響を受けそうになったら、まずは『怒っているのは相手の問題。自分には関係ない』と考え、冒頭でお伝えした『タイムアウト』を実践するのもいいでしょう」
いったん席を立ってトイレに行ったり、可能であれば仕事をする場所を移動したり。「タイムアウト」を取って、自分だけでなく他人の感情にも振り回されないようリセットしてみて。
後編:「怒り」を対処 すぐできる感情コントロール&伝え方(この記事)
聞き手・文/青野梢 写真/PIXTA

日本アンガーマネジメント協会理事。大手民間企業、官公庁などで「伝わるコミュニケーション」をテーマに研修、講演を実施。著書は「いつも怒っている人も うまく怒れない人も 図解アンガーマネジメント」(かんき出版)など多数。