現場第一主義だからこそ、リアルがわかり数字も出せる
A:RMKもSUQQUも、爆発的にヒットしました。石橋さんは数々の伝説をつくられたとか。
石橋:伝説というか、百貨店との信頼関係でしょう。僕は現場第一主義なので徹底的に売り場でリサーチしました。売り上げはデータで見えても、本質や中身は実際に行かないとわからないから。でも百貨店が求めるのは単純に数字。
A:確かに。
石橋:売り上げを上げれば百貨店は納得する。とにかく、必ず相手が不安になる前に結果を出そうと。
A:その実績、説得力、パワーに、どんな百貨店も石橋さんには場所を貸すと聞いていました。
石橋:だとうれしいんですけど、それほど簡単じゃない(笑)。RMKを10年、SUQQUを5年。目標だった海外進出も果たせて、ひと区切りついたかな、と。
A:ロンドンでしたっけ?
石橋:そう。日本のブランドがヨーロッパで評価されたのはうれしかった。日本の化粧品ブランドはアジアで売れても、欧米では評価されにくいんです。
素材も技術力も世界に誇れるメイドインジャパンの化粧品
A:THREEには、そんな思いも込められているんですね。
石橋:車にしろファッションにしろ機械にしろ、日本のモノづくり、技術力の高さは世界で認められている。でも化粧品はまだまだで。
A:虎視眈々と狙っていた?
石橋:いまだアメリカ、ヨーロッパがメインの美容マーケットに、 ジャパンブランドで一石を投じたいという気持ちはずっと温めていました。
A:実現したのがTHREE。
石橋:日本には昔から、自然を生かす素晴らしい美容文化がある。日本列島は天災の多い国だけど、だからこそ土地が肥え、智恵も身につく。おいしい水や米、植物が育ち、野菜や果物、肉も世界一だと思っています。THREEのコンセプトは、そんな日本ならではの資源を生かす「神様のレシピ」。
A:従来のオーガニックコスメとは一線を画す何かを感じていました。それは原点にあるメイドインジャパンの素材とスピリットだったのですね。
石橋:THREEが目指すのは「エコかっこいいハイブリッドコスメ」。それを日本の素材を使って日本クオリティでつくる。
A:社長自ら畑に行かれることもあるんですか?
石橋:好奇心の塊ですから、日本全国どこへでも。自分の目で見たいし生産者とも話したいし。
A:子どもの頃の地図好き、夢想が今かなった、みたいな(笑)。
石橋:こちらの思いは、直接話をして初めて伝わるものなんです。
A:最後は人間と人間の信頼関係。これも現場主義のたまものですね。
石橋:現場の声から生まれている製品も多いし、異性だから気づくこともあるんです。女性は意外に面倒くさがりで雑だとか。
A:よくご存じで(笑)。
石橋:1歩じゃなく半歩先を行こうと。100年やっているブランドには資金力も生産力もかなわないから、ちょっと視点を変え、同じ土俵では戦わないようにしています。
A:目の付けどころがうまいなあといつも感心します。
石橋:実は、最初の3年間は厳しい道のりだったんです。
A:最初は、一部の人から支持される都市型ブランドだったような。
石橋:でも時代はTHREEを求めているはずと確信していたから、迷わずに。今ではおかげさまで、地方の女性や男性にも好評です。
A:この心地よさは老若男女、万国共通な気がします。
石橋:欧米の百貨店からも声がかかり、世界に日本のビューティを発信できる日も近い。これからも小舟だからこそのスピード感を大事に、小さくても存在感のあるブランドでありたいですね。
THREE TEL.0120-898-003

株式会社ACRO 代表取締役社長
1951年生まれ。鹿児島県出身。大学卒業後、国内化粧品メーカーに就職。以後、RMKやSUQQUなど大人気の百貨店ブランドを立ち上げ、2008年に株式会社ACROを設立。2009年「NATURAL HONEST CREATIVE」を指針とする「THREE」を立ち上げる。2 0 1 3年1 0月、青山に初のフラッグシップショップ THREE AOYAMAをオープン。原料の生産地や商品開発に立ち会い、ブランド構築に現場で携わることを信条としている。
Photos: Kiyohide Hori Text: Eri Kataoka Edit: Aya Aso
日経リュクス「RMK、SUQQU、THREEの“生みの親” 、株式会社ACRO 石橋 寧さんに迫る」を転載