11月29日(日)に開催された「WOMAN EXPO KOBE2015」。働く女性向けの国内最大級のこのイベントでは、豪華な出演者を迎えてさまざまな講演やセッションが行われました。会場Aでは、元宝塚歌劇団・雪組トップスターで、女優として活躍中の壮一帆さんが登場。満席となった会場の熱気のなか、ラジオパーソナリティーの小山乃里子さんを聞き手に、「組織の中で自分の力を最大限に引き出すための、心と体のメンテナンス法」と題して、トークショーが行われました。
ベストなコンディションを維持することは、トップの責任
小山さんのラジオ番組に壮さんが出演して以来、長く親交を深めてきたというお二人。「えりちゃん」「ノコさん」と呼び合い、ジョークも交えながら和やかにトークが始まりました(敬称略)。


小山:壮さんは、トップになったとき、組をまとめていくためにどんなことを考えたの?
壮:まず気をつけたのは、常に心身ともに健康であること。やはり常に主役である立場ですし、先頭を切って作品を背負っていくという責任感がありました。宝塚の公演は期間が長く回数も多いのですが、1回しかご覧になれないお客様もいらっしゃるので、常に同じものをベストな状態でお観せしなければいけない。また、これは会社でも言えると思うんですが、チームの中でトップの人の調子が悪くなったりすると、ほかの人たちにすごく影響が出るんです。だから、とにかくいいコンディションでいることだけは気をつけました。
小山:下級生の名前を覚えてあげたり、元気がない子に声をかけたりもする?
壮:はい。私も下級生のとき、花組で真矢みきさんから「壮ちゃん」と呼ばれたことがすごくうれしかったので、名前を覚えて、その子の個性を意識して見るようにしていました。
小山:若い子が悩んでいるときや相談があったときは、どういう返事をするの?
壮:褒める、それからダメ出しをする。褒めまくっても怒りすぎてもダメで、ちゃんといいことは言うけれども、ダメなところはダメと厳しく言う。その子の人間性を見ながらバランスを考えてやっていました。私も下級生のときは怒られることも注意されることも多かったんですが、逆に指導する立場に立つと、それがものすごく頭と労力を使うことがわかって、上級生って大変だったんだと思いましたね。
ピンチをチャンスととらえて前に進む
小山:雪組に行く前の花組ではトップになれず2番手にいました。そのときは悔しかった?
壮:いや、いい刺激になりました。もちろん悔しい気持ちもありましたけど、後ろばかり見るんじゃなく、これはチャンスなんだと考え方を転換して、前に進もうと思いました。トップになれなかったのは自分の中の何かがダメだったんだと思い、その何かを探すことができたから、心を強く持ってトップの時間を過ごせたと思っています。
小山:一生懸命やっているのに、報われなくて悔しい思いをしたことは、皆さんもご経験があると思うんですけど、「よし、これがチャンス、頑張るぞ」という思いで、これからお仕事に励んでいただけたらね。
壮:捉え方一つで絶対に自分の人生って変わるはずですから。そしてどうせ変わるのなら、いい方向に変わっていければ、もっと日本の女性は輝くんじゃないかなと思うんです。
小山:皆さんに「これだけは伝えたい」ということはどんなことでしたか?
壮:私が下級生に特に言っていたのは、天狗になるのなら、中途半端にならず、とことんなりなさいということ。中途半端な人間からは中途半端なものしか出てこない。特に芸事の世界は自分自身をさらけ出すのが仕事ですから、そういうものを表現していかないとお客様にも伝わりません。それは一般社会にも通じると思うんです。自分の人生にちゃんと向き合って悔いなく生きるようにする。そのために、少しでも楽しむ方向に意識を変えるとか、いい方向にスイッチを切り替えていく。同じ物事でもいいほうにとるか、悪いほうにとるかは自分次第。目先のことだけじゃなく、その先にあるものまで視野を広げて見るのが一番大切だと思います。私は基本的に自信のない人間ですが、「自信を持つ」と考え方を変えていけば、絶対にその方向になっていくと思うので。
軽妙なお二人のトークで、あっという間に時間は終了しました。ディナーショー、ミュージカル公演など多忙なスケジュールを控える壮さん、今後の活躍も楽しみです。