こんにちは。「天気のヒミツ」連載の気象予報士 伊藤みゆきです。
毎年のように「夏からずっと暑さが続いたかと思えば急に寒くなって、“秋”が短くなったよね」という声を多くききますが、この秋は、しっかり秋を満喫できているのではないでしょうか?

昨年は東日本と北日本で9月の気温が低くなり、秋の気温は平年並みという結果でしたが、その前4年間は、夏の暑さを10月ごろまで引きずっていたので「夏からずっと暑くて秋らしさがない」と感じることが多かったのかもしれません。
特に2年前の10月は、夏の高気圧とされる「太平洋高気圧」の勢力が強く、記録的に暑くなりました。東京では10月12日に31.3度を観測し、これまでで最も遅い真夏日の記録を更新したほどです。
今年の10月は高気圧が次々に本州付近を通る「帯状高気圧」型の気圧配置が多く登場しています。
この気圧配置の特徴は、(1)広い範囲で晴天が続き(雨が少ない)、(2)朝晩は冷えて、昼間は暖か、です。「太平洋高気圧」に覆われる晴天と違って湿気が少なく、夜間の気温が大きく下がるようになります。放射冷却現象が強まるためです。

「帯状高気圧」型では、厄介なことと期待できることがそれぞれあります。厄介なことは
・空気が乾燥し夜間に冷えるので、喉や鼻の粘膜を傷めやすく、風邪引きリスク大
・空気が乾燥し昼間の陽射しが強いので、日焼けや肌トラブルのリスク大
・植物や農作物への水やり労力増
などが挙げられます。
一方、期待できるのは「美しい紅葉」です。
葉がみずみずしく一斉に色づくには
・昼間穏やかに晴れて、夜間との温度差が大きくなる(葉の色づきが順調に進む)
ことが大切です。



「美しい紅葉」の条件を満たしている地域も多いので、見ごろを迎えた九州や四国の山では「例年になく色づきが鮮やかだ」という評判です。
9月半ばにかけての「平成27年9月関東・東北豪雨」の影響を受けた地域がやや心配ですが、9月後半からは穏やかな天気が続いているので、今後も木々が強い雨風にさらされないことを願っています。