熟成食の進化が止まらない。職人の技がブームを後押しして、新ジャンルが次々と登場しており、牛肉から豚肉、鶏肉、さらには魚やスイーツにまで広がっているのだ。選りすぐりの熟成フードを紹介する。
熟成肉といえば、丹波牛の精肉販売店「京都 中勢以」やドライエイジングビーフ(乾燥熟成牛肉)の製造販売店「さの萬」が先駆けたのちに話題となり、今や多くの飲食店で取り扱われている。
食品を熟成させるには、温度管理に始まり、食材の見極めにも対応できる技術が求められる。職人の技がブームを後押しして、新ジャンルが次々と登場。牛肉や豚肉、鶏肉、さらには魚やスイーツにまで広がっている。
話題の「氷温熟成肉」使用の豚肉グルメ
まずは、豚肉。豚肉は一定期間熟成させることで、含まれている水分が全体になじみ、しっとり感やなめらかさが生まれる。さらにコレステロール値の低下に効果的とされるリノール酸やオレイン酸も増加し、グルタミン酸や遊離アミノ酸群などのうまみや甘味も増すという。
熟成豚肉の料理のなかでも、「氷温域」で熟成させた豚肉を炭火で焼いた「氷温熟成豚のグリル」に注目。これは、凍る直前のマイナス1℃で14日間貯蔵・熟成された話題のブランド豚肉「氷温熟成豚姫」をいち早くとり入れたグリル料理だ。外はカリッ、中はジューシーに仕上げるため、中心まで火が通ったら素早く火からおろし、焼きすぎないようにしているとのこと。
ちなみに「氷温」とは、冷蔵でも冷凍でもない、第三の温度域のこと。食品はそれぞれ凍り始める温度(氷結点)が違い、0℃以下から凍り始める温度までが氷温域となる。

このメニューを展開するのは、都内5店舗でチェーン展開をしている“肉バル”の「ベルサイユの豚」。
「豚肉自体にうまみがあるため、味付けはシンプルに塩とコショウのみで仕上げています。また、炭火で焼いているので、氷温熟成豚肉のおいしさがより引き立ちます」と説明するのは、同店を運営するダイヤモンドダイニングの事業部料理長、小山裕達さん。好みで塩とわさびをつけると、うまみがさらに引き立つという。
この熟成豚肉とワインとの相性は抜群。というのも、そもそもワインは熟成ドリンク。“W熟成”のマリアージュが楽しめるというわけだ。
鮮魚も熟成、干物や刺身が洋風創作料理に変身
熟成魚の料理もぜひ食べてみたい。魚も熟成されることで、まろやかな味わいが増す。魚特有の生臭さを軽減するメリットもある。
これは、単なる干物ではなく、熟成後に天日干しした魚を使うメニューの「舌平目のHIMONO 香草ガーリックバター」。熟成されている分、うまみが凝縮されていてワインにも合う。ハーブの香りと交わることで、干物の概念が覆される一品だ。

このメニューを供するのは、各国の魚料理とワインを気軽に楽しめる「Pesce Uno fresco(ペッシェ ウーノ フレスコ)」。魚の仕込みには手間暇をかけており、1~3日間かけてマイナス1℃~マイナス4℃の氷温帯で熟成。その後、海水に近い調味液に3時間程度ひたして、4時間~半日ほど天日干ししている。「一般的な干物と異なり、この後さらに独自配合のハーブオイルに漬け込むことで、ワインにも合う熟成干物が完成します」とシェフの坂牧弓人さんは説明する。

同店では、もう1品、熟成メニューがある。見た目と食べた時のギャップに意表を突かれる「本日の魚の生ハム」だ。見た目は刺身、しかし食べてみると……。
魚を独自配合のハーブソルトとマリネして、熟成させている。表面はドライ感があるものの、中はしっとり粘度のある食感になり、魚ながら生ハムのような変貌を遂げるのだ。熟成させることで魚脂が浸透した濃厚さがあふれ出す。入荷状況によって生ハムにする魚の種類は変わるので、訪れるたびに新たな発見があるだろう。
次のページでは、熟成スイーツを紹介。