腸は、食べ物の栄養を消化・吸収するだけでなく、口から入ってきた病原体やその毒素に直接さらされる部位でもある。そのため小腸には、病原体の情報を全身に伝える、体内最大の免疫システムが存在する。この免疫システムに働きかけ、病気の感染から体を守ってくれる「免疫力アップ食材」を覚え、作りおきレシピで毎日食べて病気に負けない体を作ろう。
体の中でも最大の免疫器官といわれる腸。「中でも重要な組織の一つが、全身から免疫細胞が集まってくるパイエル板だ。小腸の中を物が通ると腸管上皮にある細胞がその一部を取り込んで、パイエル板で待つ免疫細胞に情報を伝える。この情報が病原体に抵抗するための抗体を作るのに必要となる」と、医薬基盤・健康・栄養研究所の國澤純さんは説明する。「この抗体を作る過程でビタミンB1が不足すると、パイエル板が小さくなり、抗体産生に必要な免疫細胞の数が減ってしまうことがわかってきた」(國澤さん)。
ビタミンB1は糖質などの栄養素の代謝に使われる。炭水化物ばかりとるなど栄養が偏っていたり、お酒をたくさん飲む人は不足しがち。豚肉やノリなどで毎日多めにとっておきたい。
炭水化物やお酒をよくとるという人は不足しがち・ビタミンB1
小腸にある免疫の情報収集基地をスムーズに稼働させるのに不可欠。不足すると、病気に抵抗する「抗体」を作る力が低下する。
体力が低下していると感じたら・キノコβグルカン&フコイダン
侵入した病原菌やウイルス感染細胞を見つけて破壊するNK(ナチュラルキラー)細胞などの働きを強化する。
魚をあまり食べない、紫外線は天敵という人は・ビタミンD
ビタミンDは、免疫細胞の抗菌ペプチド産生能を高めることで、体内から病原体を排除する力を強化する。

医薬基盤・健康・栄養研究所
ワクチンマテリアルプロジェクトプロジェクトリーダー
薬学博士。大阪大学大学院修了。東京大学医科学研究所准教授を経て現職。食品成分と粘膜免疫の関連を研究する。「腸が体内最大の免疫機関なのは、外界から入ってくるものに直接触れる部位だから。逆に考えれば、食品で免疫にアプローチしやすいということ」。

日本機能性医学研究所所長
日本医科大学医学部卒業。栄養療法やケトジェニックダイエットなどを指導。「ビタミンD不足は、花粉症など免疫の暴走によるアレルギー反応につながることも」。著書に、『サーファーに花粉症はいない』(小学館)。
取材・文/堀田恵美、写真/鈴木正美、スタイリング/石川美加子、栄養計算/原山早織(食のスタジオ)、デザイン/ビーワークス
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