自律神経が乱れる原因として最も大きいのが、ストレス。ストレス対策に役立つグッズや施設、アプリを紹介しよう。
ストレス解消に効くのは 4R
適度なストレスは、やる気や張り合いをもたらすが、過度なストレスは「交感神経と副交感神経のバランスを乱し、イライラや血圧の上昇、胃潰瘍などの症状をもたらすこともある」と精神科医の古賀良彦さんはいう。
「自律神経の乱れの原因となる強いストレスの対策には、リトリート、レクリエーション、レスト、リラクゼーションの4つの“R”が効く」とメンタルヘルスとコンディショニングに詳しい帝京平成大学教授の渡部卓さん。「この4つのRを偏りがないように取り入れるのが大事。いつも同じことをやっているとそれがストレスになることも」という。専門家の意見に基づき、それぞれのRを叶える施設やグッズを厳選した。自分に足りていない“R”を取り入れてストレス対策をしよう。
ストレス源から距離を置く【リトリート施設】
普段とは場所を変えてじっくりと静養、保養をすることを「リトリート」という。日常のストレス源から離れ、非日常に身を置き心身を養生しよう。
「ストレスのある日常から距離を置くと、脳がリセットされてストレスが和らぐ」と古賀さん。旅はその典型だ。渡部さんは「特に森林浴がお薦め。日本発祥だが、海外でもShinrin-yokuとして認知され、交感神経を鎮めて疲れた心を癒やすこともわかっている。日本各地に森林浴施設がある」と話す。
時間が取れないときは、「近くても普段行かない神社などを訪れたり、異世界にいると感じられるVR*を使うのでもいい」(渡部さん)。
*VR:バーチャルリアリティ。ゴーグルのようなディスプレイなどを装着して仮想空間を体験できる技術
閉鎖空間で水に浮く、異世界に行くような体験【アイソレーションタンク】
タンクの中にはエプソムソルト(硫酸マグネシウム)が大量に入っており、ぷかぷかと浮かぶ。完全に重力から解放され、外界の音や光から遮断されることで、心身ともに深くリラックスした状態を体験できる。日本で体験できるのは、ここで紹介する施設を含め数カ所のみ。
ライターUが体験・日常生活では味わえない極上の浮遊体験
疲れをうまくリセットできずに悩んでいた私が「アイソレーションタンク」を初体験! LEDで照らされているタンクに入り、ハッチを閉じて照明を消すと、外の光がわずかに隙間から入るほの暗さ。この暗さが心を落ち着け瞑想状態に導くのにいいという。あお向けになると体がぷかり―。暗闇の中に一人で浮いていると、はじめは不安を感じるが、目を閉じて呼吸に集中するうちに、頭の中にふわっと光が差し、現実から引き離されるような感覚に。そこからは体が自分のものではなくなったような、味わったことのない浮遊感―。体がからっぽになって、日々の疲れも精神的な煩わしさからも解放されたかのよう。
あっという間に1時間が過ぎた。水から上がると、本来の体重をずしっと感じたが、贅沢すぎる全身の深い休息を味わえ、頭がスッキリしているのを実感した。

杏林大学名誉教授
精神科医。慶應義塾大学医学部卒業。脳の老化防止、ストレス解消の一つに塗り絵を提唱している。著書に『睡眠と脳の科学』(祥伝社)。

帝京平成大学現代ライフ学部教授
ライフバランスマネジメント研究所代表。著書に『明日に疲れを持ち越さないプロフェッショナルの仕事術』(クロスメディアパブリッシング)ほか多数。
取材・文/海老根祐子、氏家裕子(COCORODO体験)、羽田光(編集部) 写真/村田わかな(COCORODO)
「これ以上の情報をお読みになりたい方は、日経ヘルス誌面でどうぞ。」