肌のために良いと思っていたケアが、実は肌の老化を早めていた!? 特に問題なのが、クレンジングでの「落としすぎ」と「こすりすぎ」。肌のバリア機能が低下した“大人敏感肌”にならないためにも、洗浄力が“ゆるめ”のクレンジングの選び方、使い方に切り変えよう!
「ある日急に赤みやピリピリ、むずむずを感じやすくなったという、“大人敏感肌”の人が35歳以降に増えている」と話すのは、皮膚科専門医の津田攝子さん。主な原因は、表皮の保湿成分が減少し、バリア機能が低下していること。刺激に弱くなり、肌表面や内部での微弱炎症が続くようになると、真皮を支える成分も減ってたるみやすくなる。「大気汚染やストレスなどバリア機能を低下させる原因はさまざまだが、クレンジングなど日々のケアでの“落としすぎ”や“こすりすぎ”も大きな要因」(津田さん)。
とはいえ、落としすぎやこすりすぎの自覚がない人は多いという。「洗った後に肌が乾燥するなら、クレンジング剤などの洗浄力が強く、落としすぎの可能性がある」と、化粧品成分に詳しいかずのすけさんは指摘する。また、クレンジングしながらのマッサージはこすりすぎのもと。「頬まわりへの刺激はたるみを助長する原因になりかねない」と、銀座ケイスキンクリニックの慶田朋子院長。
まずは、メイクや肌に合った洗浄力が「ゆるめ」のクレンジング剤を選ぶことが、落としすぎ、こすりすぎを防ぐ第一歩だ。
「落としすぎ」クレンジングで何が起きる?
洗浄力の強すぎるクレンジング剤や洗顔料は、肌の潤いを保つのに不可欠な表皮のNMF(天然保湿因子)や細胞間脂質を流出させ、バリア機能を低下させる一因に。結果、紫外線や大気汚染などの外部刺激を受けやすくなり、微弱炎症が起きて乾燥や肌荒れに。
こんな心当たりがあれば…落としすぎ!
□ ダブル洗顔は欠かせない
□ 乾燥で粉を吹くことがある
□ 赤みやかゆみが出やすい
「こすりすぎ」クレンジングで何が起きる?
バリア機能が低下した肌内部で微弱炎症が続くと、やがて真皮のコラーゲンが切断されるなど肌の構造自体が弱くなっていく。そこにこすり刺激が加わることで、顔の皮膚や筋肉、脂肪、骨をつなぎ止める靭帯などの軟部組織が傷つき、たるみやシワの原因に。
こんな心当たりがあれば…こすりすぎ!
□ クレンジング時にマッサージをしている
□ ふきとり用クレンジング剤を愛用している
□ 角質や毛穴ケアでスクラブ剤をよく使う
落としすぎ対策●まずはメイクに合った“ゆる”クレンジングを選ぶ
洗浄力の強すぎるクレンジング剤は、肌の潤いを保つ大切な成分まで落としすぎて肌バリアを弱めてしまうことも。「落としすぎを防ぐお薦めのクレンジングは、メイクの油分をなじませて(乳化)落とすオイル系。ただし、ミネラルオイルが主成分のものは脱脂力が強いことが多い。パウダーなどごく薄づきのナチュラルメイクなら、肌への負担が小さいミルク系でもいい」(かずのすけさん)。
ダブル洗顔に使う洗顔料も洗浄力がマイルドで「洗い上がりがしっとりするものを。肌状態によっては必ずしも毎回使わなくてもいい」(かずのすけさん)。
クレンジング選び
BBクリーム・リキッドファンデのときは…
酸化しにくい「油脂系オイル」で乳化させてオフ
クリーム系やリキッド系のファンデーションには、油分となじみやすいオイル系がお薦め。短時間で乳化し、するっと落とせる。「下に挙げる酸化しにくい油脂がベースのオイルなら、きちんと汚れを落としながら必要な潤いは守ることができる」(かずのすけさん)。
パウダーファンデのときは…
ミルク系の洗浄力の弱いものを。W洗顔は原則不要
「パウダーやミネラルファンデだけなど、ごく薄いメイクのときは、洗浄力のやさしいミルク系が適している」(かずのすけさん)。乾燥しやすい肌は、ミルククレンジングだけでOK。
やめる? やめない? どっち?
さまざまな説があるダブル洗顔&朝洗顔。大人敏感肌についてかずのすけさんに聞きました!
Q. ダブル洗顔は?
A. ニキビ肌、敏感肌ではダブル洗顔が必要なこともある。
「ダブル洗顔で肌の乾燥が気になるという場合は、クレンジングだけで基本的にOK。お薦めは肌に残留しにくい植物オイルを主成分とする油脂系クレンジングだが、ニキビができやすい肌質の場合は注意が必要。というのも皮脂の類似成分である油脂が、ニキビや炎症を誘発する皮膚常在菌の餌となる場合があるため。また、敏感肌も常在菌類が皮脂を分解してできる脂肪酸が原因で炎症を起こしやすい。自分の肌の状態を見極めて、ダブル洗顔を適宜行うことも大切」
Q. 朝の洗顔料は?
A. 夜、洗顔していたらお湯だけでも大丈夫。
「肌が乾燥しやすく、トラブルが起きやすい大人敏感肌のバリア機能を保つためには、洗浄剤を使った洗顔の回数を極力減らすのがベター。日中のメイクを落とすクレンジングは必要だが、夜きちんと汚れを落としておけば、朝は軽くぬるま湯で洗うだけでもいい。ただし、今まで高い洗浄力をもつ石けんや洗顔フォームなどで朝も洗顔をしていた場合は、突然やめると過剰な皮脂が残留し、炎症などのトラブルを引き起こすことも。洗浄力の弱いものに切り替え、徐々に回数を減らそう」

皮膚科専門医・津田クリニック(佐賀県)
帝京大学医学部卒業。皮膚科医としての臨床と自らの肌を実験台にしたスキンケア製品の開発に携わり、「TSUDASETSUKO」コスメを展開。著書に『静脈マッサージで、小顔!』(講談社)がある。

有機化学が専門。美容を化学的視点から解説するブログ「かずのすけの化粧品評論と美容化学についてのぼやき」が好評。著書に『オトナ女子のための美肌図鑑』(ワニブックス)など。https://ameblo.jp/rik01194/
取材・文/やまきひろみ 撮影/鈴木 宏 ヘア&メイク/依田陽子 スタイリング/椎野糸子 モデル/島村まみ イラスト/三弓素青
「これ以上の情報をお読みになりたい方は、日経ヘルス誌面でどうぞ。」