現代を生きる働き女子にとって、芯の通った強さや凛とした美しさを磨くことは、自分らしく生きるうえで大切だ。そこでヒントになるのが、「ヤマトナデシコ」とも形容される古代女性。実は古代の女性は働き女子のルーツだった?古代女性の生き方を通して、真の強さや美しさを学ぶイベントが開催された。
9月24日(土)に、東京・青山の銕仙会能楽堂で行われた「なら記紀・万葉 ヤマトナデシコ塾~古代から未来へ、かわらぬ美への想い~」には、老若男女を問わず多くの人々が参加。天平衣装に身を包み、漫画家の里中満智子さんや文化服装学院の元学院長、小杉早苗さんの講演に耳を傾けた。
第1回講座の講師として壇上に上がったのは、参加者同様に天平衣装をまとった里中満智子さん。「古代日本女性の実力」をテーマに、漫画家らしいロマンあふれるお話をしてくれた。

想像以上に自立し、社会で力を持っていた古代女性たち

現在の奈良県に都があった飛鳥・奈良時代。当時の庶民の衣装は麻でつくられていて、色は生成り。色は身分で決まっていたので、誰もが好きな色を着られる時代ではありませんでした。今日、女性の皆さんが着ていらっしゃる衣装はカラフルで、さしずめ高級女性官僚。そう、当時は女性も自立していて、男女差はなかったんです。
私が飛鳥・奈良時代に興味を持つようになったのは、中学時代、授業で『万葉集』について勉強をしていたときです。調べてみると、『万葉集』には恋の歌が多い。しかも、男性の歌か女性の歌か分からないような歌も多く、言ってみれば、男性もすごく女々しい歌を詠んでいたりしているんです。「あなたのことを思うと胸が張り裂けそうだ」といった意味のものとかね(笑)
それまで私のなかにあった日本男児のイメージは、「女にうつつを抜かすなんてもってのほか。男にはそれよりももっとやるべきことがある!」と考える男性。多くの女性もそうではないでしょうか。でもこれは、武士の時代につくられた男性像だったんですね。『万葉集』にある歌からは、例えば、身分の高い男性が身分の低い女性に告白して、あっさりフラれてしまう様子さえ想像できてしまう。当時の日本男児は、こんなにも素直だったんだ!と感じました。とても面白いと思いませんか?

古今東西を問わず、神話や伝説はその民族の価値観を表すとされています。そして神話において最高神は、農耕社会では通常は太陽神です。普通、ギリシャ神話のアポロに見られるように太陽神は男性というケースが多いです。逆に月は女神ですよね。
でも、日本の神話の太陽神は天照大神(あまてらすおおみかみ)。女性です。月は月読命(つくよみのみこと)で、男性です。このほかにも、日本神話や伝説には強い女性がたくさん登場します。つまり、昔から日本では女性がとても強い存在として尊重されてきたのです。
実際、飛鳥・奈良時代には、初の女帝として知られる推古天皇をはじめ、6人の女性天皇が日本を治め、その治世には不正が起こりにくかったと言われています。日本の女性天皇はこれまで8人ですから、ほとんどがこの時代ということになります。
日本最古の歴史書である『古事記』からは、日本に伝わってきたそのような神話を読み解くことができます。『万葉集』には、素直に自分の気持ちを詠む男性がたくさん登場し、しっかり働く女性がいました。そこには、身分の高さも低さも関係ありません。そして、外交上必要だったことで、日本初の正史『日本書紀』が生まれました。その制作の責任を担ったのも女性天皇でした。女性はお飾りではなく、しっかりと働いていたんですね。
そうやって見てみると、飛鳥・奈良時代は、今とあまり変わっていなかったのではないかと私は思います。奈良県には、『万葉集』を彷彿させるような風景がたくさん残っています。明日香村のキトラ古墳で見つかった極彩色の壁画を保存・公開するための施設も、9月24日にオープンしました。奈良を訪れて、ぜひ、古代の女性たちの力強さやしなやかさを感じてみてください。