地域とのつながりは、わが子を守ることにつながる
先ほどの「父の会」での先輩パパからの言葉には、こんな続きがあります。「父の会がしっかりしていれば、地域のつながりも強くなる。もし、災害が起きたときには、僕たちが協力し合って地域の子どもたちを守りましょう」。
引っ越してきたばかりで、周囲に知人がいなかったわが家にとって、これほど心強い言葉はありませんでした。
父の会には、地元の消防団に所属している人もいたり、町内会に精通している人もいたりして、町内で行われる防災訓練に子どもたちと一緒に参加したこともあります。もちろん訓練そのものも大切ですが、それ以上に、わが家には小さな子どもが3人いて、そのうち一人は赤ちゃんで……という家族事情を地域の人たちに知ってもらうことで、いざというときに地元の人たちが子どもたちを守ってくれるかもしれない。
現在の住まいに引っ越してきてから3年目。近所にもずいぶん顔見知りが増えました。わが家の子どもたちは、いつしか近所の90代のおじいちゃんと仲が良くなっていて、顔を合わせれば子どもたちのほうから話しかけにいくこともあります。
「子どもは地域で育てるもの」とよくいいますが、もしかすると、育てられているのは私たち大人のほうかもしれません。意外に思われるかもしれませんが、私も決して社交的な性格ではありません。つながりを求めること自体が目的になっていたら、今頃、窮屈に感じることもあったはず。
ただ、「子どもの成長を近くで見ていたい」「今しかできないことをやっておきたい」という、共通の目的を共有できる人たちと出会えたことで、地域との関わり合いが継続できています。私自身が努力したわけではなく、子どもたちのおかげで今のわが家があると思っています。

文/樋口可奈子 写真/小野さやか
