不機嫌は子どもからのSOS
忙しい日々を送る中で、子どもの小さな変化になかなか気づかなかったり、気づいても後回しにしてしまうということもあるかもしれません。でも、返事に元気がない、表情が暗いなど、「普段とちょっと違うな」と感じたら、それを見逃さないようにしてあげてください。
子ども自身、普段と違う自分に気づいていなかったりするので、そんなときは大人が「どうしたの?」と、声をかけてあげるだけで子ども自身が「自分がいつもとちょっと違う」という感覚をつかみやすくなります。
不機嫌な態度は子どもからのSOSです。ささいなことですが、靴を履くのが遅いというのも一つのサイン。降園時にふだんはさっさと靴を履ける子がもたもたしていたら、それは何かがあるということです。「先生とタッチしたかったの?」「お友だちとバイバイしたかったの?」と声をかけてあげるといいでしょう。
イヤイヤを言語化することで感情表現力が育つ
面白いのは、子ども自身が本当に先生にタッチしたかったり、お友だちにバイバイを言いたかったわけではないかもしれないということ。なんとなく原因の分からない「モヤモヤ」を抱えているときは、親や保育士に理由を付けてもらえるだけでスッキリしてしまうことがあるのです。これは、言語化できないこの時期ならではの特徴です。
1~3歳ごろの子どもにとって「この気持ちがなんなのか」という感情は、大人が教えてあげないと分からないもの。子どもの気持ちを代弁しながら「イヤだったね」「悲しかったね」など言葉をかけてあげると「この気持ちは『悲しい』ということなのか」とだんだん理解できるようになります。
また、大人にあやされることで、子ども自身が自分の気持ちの切り替え方に気づけるようにもなります。大人だってイライラしたときは深呼吸をしたり伸びをしてみたりと、それぞれの対処法を持っていますよね。子どもをあやすのは単にご機嫌をとるだけではなく、「今の感情はどういうもので、どうやったら立ち直れるのか」を学ばせる機会でもあります。「イヤなことがあったらママやパパに抱っこしてもらうことで気持ちをリセットできる」という学習をしている子もいるのです。
「感情が見えない大人」や「キレやすい子ども」という言葉もよく聞きますが、小さいころにこうした経験をしてこなかったからではないかと思います。ぜひ、親が手助けして子どもの感情表現力を育ててあげてください。
イヤイヤ期をただやり過ごすだけでなく、今後の成長にとって大事な時期と捉えて、お子さんと向き合っていけるといいですね。

次回は、イヤイヤ期に対する親の気持ちの切り替え方について伺います。
(文/樋口可奈子、写真/小野さやか、イメージ写真/鈴木愛子)
保育士
