公立のハイレベル名門共学校でサバイバルする日本人留学生
さて次の学校は、ニュージーランド最大の都市であるオークランド市の中心にある「マウント・アルバート・グラマースクール」だ。1922年に男子校としてスタートした同校は、現在共学校となりニュージーランドにおける名門校のひとつ。そんな人気校で日本人の留学生が活躍していると聞き、訪問してみた。
マウント・アルバート・グラマースクールは、13歳から17歳(中学~高校)の生徒が約3000人通う大規模校。同校は、奨学金を得た生徒の人数がニュージーランドTOP6に入る名門校。副校長のフィオナ・バーカーさんに同校の教育方針を尋ねてみたところ、「1.マネジングセルフ(managing-self/自己管理)、2.レジリエンスエクスペリエンス(resilience-experience/困難から回復する経験)、3.ソルビングプロブレム(solving-problem/問題解決力)」の3つを挙げた。
「わが校は、サイエンスとテック系の分野で就職に強いです。特にコンピューターデジタルテクノロジーを強化しているところ。オークランドの工科大学の施設を使った教育も展開しています。最近は、ファームテック、つまり第一次産業とテクノロジーを融合させた教育も特徴となっています。アグリテックやアグリビジネスが、酪農などの人手不足を解決していける。若者がこの学校で得た知識とスキルを持って、世界各国が直面している問題を解決していけるような人材育成をしています」(バーカー副校長)。
こんなハイレベル校でありながら、2017年の生徒会長は日本からの留学生だったという。日本人留学生は、どんな学校生活を送っているのだろうか? 現在留学生として寮やホームステイで暮らしている中高生4人に、インタビューをしてみた。

ボーディングスクールに入り英語が断然流暢になった
●Hさん
出身地/三重県
留学期間・寮での暮らし/現在17歳の高校2年生(YEAR13)。留学直後はホームステイをしていたが、3カ月経ってボーディングハウス(寮)に入った。寮では先輩たちとの関係やルールがあって厳しい面もあるが、僕は断然、ホームステイより寮が楽しい。友達も増えるし、コミュニケーションがしやすくなった。また、ボーディングハウスに入っているとアクティビティもあるし、英語を話す機会が格段に増えて流暢になった。YEAR 13(17歳)になると個室(2人部屋)が貰えるので、これも楽しみのひとつ。病気のときなどはさすがにつらいが、2段ベッドで海外の友達と密に暮らすのは楽しいですね。基本的な生活スタイルは、毎朝6時半に起きて皆でランニングをします。夜は9時40分にジュニア(中学生)が就寝、10時10分にシニア(高校生)が就寝。毎日の食事はとってもおいしい。たまにチャイニーズや日本食も出たりする。
留学生活の感想/学問面では、日本の教育制度は一斉に皆に同じことを教えて点数だけで並べられてきたが、こちらの教育スタイルではそんなことはない。個性を見てくれている感じがするので、とても好きだ。今後の進路予定は、こちらで高校を卒業して、大学はヨーロッパなど海外に行きたい。英語はもちろん上達しますが、勉強の仕方、人脈、考え方などグローバルな教育を受けられるので「得することがいっぱいある」と感じています。これから日本の学校からニュージーランドのボーディングスクールに留学するのは大賛成です。待ってますよ。
一般教科を英語で学べて、大量のレポートを書くので、キツイが勉強になる
●Nさん
出身地/東京都・私立巣鴨中学校
留学期間・寮での暮らし/現在15歳で、中学3年生の時から来て1年目。日本で通っている学校が中高一貫校なので、高1のうちに一回日本に戻る予定です。留学のきっかけは、親が勧めていたからで、ニュージーランドを選んだのは、安全で教育レベルが高いからです。僕はコミュニケーションは日本でも苦手なほうなので、こちらに来てキャラクターがガラリと変わったということはありません(苦笑)。ですが語学の勉強は、机上・座学でしっかりやっているので、それでいいと思っています。
留学生活の感想/学問面では、一般教科を英語で学べるというのは、中高生のうちに経験しておくのはとても有意義。討論や複合的な教科では日本より面白いカリキュラムがたくさんあって、穴埋めテストなんてない。たくさんの履修コースがあって、それぞれを英語で読み、英語でレポートを書く。英語で大量に文章が書けないときついけど、ものすごく勉強になります。一般教科履修と英語習得の両立は、日本にいたらかなえられなかったと思います。僕の得意な数学は、巣鴨中学のほうがレベルが上かな。自分は日本のトップレベル大学を目指しているので、こちらで高校卒業前に一旦帰国して大学受験する予定です。その頃には不自由なく英語で読み書きできるレベルになっていると思います。