医療関係者で母子手帳を見る機会がある場合は、予防接種や妊婦検診の記録がないなど、記載内容が重要な手がかりになります。また、子どもがおびえた様子をしたり、他人に必要以上にべたべたとまとわりついたりするのもサインかもしれません。子どもは外傷がなくても、両親間の暴力を目撃する「面前DV」や性的虐待といった、「見えない虐待」を受けている恐れがあるためです。
ただ、対応するときに最も大事なのは「犯人捜しをしない」こと。子どもに話を聞くときは「誰が」「何を」したのか聞くだけにとどめ、「転んだの?」「お父さんにやられたんじゃないの?」など、答えを誘導するような聞き方は避けるべきだといいます。
子どもの立場に立ったらどう見えるか考えて
BEAMSで最も重視されるのは「チャイルドファースト」の視点です。ゴミが充満した部屋に放置する、しつけと称してせっかんする…どんな行為が虐待と感じるかは、人によって異なります。小橋医師は「これって虐待?と迷ったら、子どもの立場に立ったらどう見えるか、この子のために今何をすべきか、を考えてください」と話します。
東京都目黒区で船戸結愛ちゃん(当時5歳)が死亡した事件のように、虐待死が起こるたびに児童相談所(児相)を批判する声が高まります。ですが小橋医師は「児相の増員は非常に重要ですが、現状ではすべてを担うのは無理です。ならば地域の中で、どのように虐待を防止するのか、考えることが大事です」と語りました。
この講演は6月17日、東京都江東区の「江東子育てネットワーク」の主催で開かれ、子どもを持つ一般の人のほか、医療関係者、保育士らも受講しました。ただ参加者からは「虐待かもしれないと思っても、実際に行動するのは難しい」と、困惑の声も上がりました。次回は、地域住民が「虐待を見つけたとき、どうするか」について、報告します。
(取材・写真・文/有馬知子 イメージ写真/鈴木愛子)