青年団を主宰し、世界的に活躍する劇作家・演出家の平田オリザさんは、大阪大学COデザインセンター特任教授、東京藝術大学COI研究推進機構特任教授、四国学院大学客員教授・学長特別補佐などさまざまな場所、形で教育活動に携わっています。
学校選びや学ぶ環境について、あるいは親の心構えなど、今の子どもたちが20年後、生き抜くための力を身に付けるために必要な「教育」について、平田オリザさんと考えていく連載。
今回は最近の教育界のトレンド、「学び合い」について。子どもは大人が言うことよりも、友達に言われたことのほうにより強い影響を受けることがありますよね。それを学びに生かすことで、全体の学力が上がるようなのです。
今の教育のトレンド「学び合い」とは
前回に続き、今回も「非認知スキル(非認知能力)」の話から始めたいと思います。
非認知スキルはIQや学力テストなどの認知能力ではないもの全般のことで、経済力に関係なく、伸ばすことができるのではないかといわれているもの。一般的には自制心や意欲、忍耐力などを指す概念です。
文部科学省は「基礎的な知識・技能をしっかりと身に付けさせること」「知識・技能を活用し、自ら考え、判断し、表現する力を育むこと」「学習に取り組む意欲を養うこと」を学力の三要素として位置付けています。その上で、「基礎的・基本的な知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成との両方が必要」とし、主体性・多様性・協働性を育もうという考えを示しています。
つまり、学力の基礎を身に付けてから、非認知能力を高め、変化の激しい社会を生き抜く力をつけようということでしょう。でも僕はこれは、順番が逆なのではないかと思っています。
それを裏付けるのが、最近、教育界でトレンドになっている「学び合い」です。
これはどの段階の子どもにも(保育園児でも大学生でも)言えることですが、親や先生が言うことよりも、友達が言うことのほうが、その子により強い影響を与えるということ。学校なら、教員が言うことは3分の1くらいしか聞いていない生徒でも、友達が言うことはよく聞くし、覚えたり実行したりする。あるいは友達の失敗例、成功例から多くを学ぶということなんです。
