“マタニティー・ブルー(ズ)”は、産後に起こるもの
よくいう“マタニティ・ブルー”も産後のうつ状態の一種ですが、これは、産後うつの中では比較的軽症で経産婦の半分くらいはかかる一過性のものです。正式名称は“マタニティー・ブルーズ”といいます。
これは「妊娠中にかかるものでは?」と思われていることが多いのですが、妊娠中ではなく、産後すぐにかかるものです。ホルモンの変化による影響などで、多くの人が感じる育児不安や、不眠や疲労の状態を指します。産後一週間までに起こる場合が多く、妊娠中に増えたオキシトシンやプロラクチンが産後、急激に減少することから、精神的に不安定になったり、出産や育児の疲れが出たりするものです。これはゆっくり休むことで数日でだいたい治り、その点で、産後うつとは大きく違います。
一方、産後うつは、少し体が落ち着いてきた産後1カ月くらいを中心に起こるといわれています。ホルモンの影響でなるものではなく、病気の症状なので、時間が経っても治らないのです。
さらに、症状が重いと「産褥精神病」となります。これは0.1%程度の人しか罹患しないのですが、自殺願望が強くなったり、子育てを放棄してしまったりすることもあるので、すぐの対応が必要です。

産後うつをチェックするには
産後うつの診断をするときに指標となる、「エディンバラ産後うつ病自己質問表」というものがあります。
質問の一部を見てみましょう。
● 物事を楽しみにして待つことができた
(選択肢)
(0) いつもと同様にできた
(1) あまりできなかった
(2) 明らかにできなかった
(3) ほとんどできなかった
● 悲しくなったり、惨めになった
(選択肢)
(3) はい、大抵そうだった
(2) はい、かなりしばしばそうだった
(1) いいえ、あまり度々ではなかった
(0) いいえ、全くそうではなかった
参照:©The Royal College of Psychiatrists 1987. Cox, JL, et al. Detection of postnatal depression. Development of the 10-item Edinburgh Postnatal Depression Scale. British Journal of Psychiatry, 150, 782-786 より一部抜粋
この質問票は、産後うつは、うつ病とはいえ産後という特殊な時期であるため、それに適したスクリーニング方法として作られた、10の質問項目から成るチェックリストです。直近の1週間の気持ちや症状について回答してもらい、その回答をポイント化して0~30点で算出することで、その度合いを表します。日本でも、産後検診や産後の助産師訪問に導入されているところも多くあります。
自分で産後うつと思えるような症状があったり、辛いなと思ったりしたら、病院に相談して構いません。産後うつは、名前の通りうつ病なので病院で医師の診察を受けて、投薬やカウンセリングなど適切な対応をすることが重要です。
次回は、産後うつの原因についてお話ししましょう。
(取材・文/岩辺みどり、撮影/稲垣純也)