子育てをしながらキャリア継続を求める女性にとって、「在宅」という働き方はどれだけ現実味のあるものでしょうか。ノウハウの整う会社が少ないことはもとより、収入面での不安、やりがいの有無などを考えると、選択肢の一つにもなり得ないというのが現状かもしれません。PwC Japanグループでは2015年、すでにPwC米国法人で成果を上げていた「在宅秘書(ASC:Administrative Support Concierge)」システムを導入。実際に働く女性たちの満足度は高く、在宅秘書のサポートを受けるパートナー(上司)も、その仕事ぶりを高く評価しているといいます。今回、PwC米国のディレクターであり、PwCにおける在宅秘書システムを構築したグレッチェン・パーシルバーさんと、日本における立ち上げからパーシルバーさんと協力してきたPwC Japan合同会社の杉山優子さんに、システム導入の背景、今後の可能性について伺いました。
「9時から5時まで会社に勤務」旧来型の条件をたった一つ外すことで、得られたもの
PwC Japanグループで働く女性のスケジュールは、週1回のオフィス勤務以外は自宅勤務。家族を送り出した後にパソコンを立ち上げるところから業務がスタートします。休憩時間を有効に使って家事や子どものための用事を済ませ、仕事を再開。1日の業務を終えてから子どものお迎えに向かうといったワーキングスタイルです。通勤時間がないこと、仕事場=自宅とあって、スキマ時間を最大限に利用できることなど、まさに子育て中のお母さんのために生まれたシステムのようにも見えます。

しかしながら、パーシルバーさんによると、このシステムはあくまで「プロフェッショナルの人材」を雇用するために取り入れたものであり、「働くママに優しく」といったような思いからスタートしたものではないとのこと。

「パートナーをサポートする秘書に、より高いレベルの資質を求めたいと考えたとき、月曜から金曜まで9時から5時まで会社で働くという従来型の条件を外し、在宅勤務システムを取り入れたらどうかと考えました。パートナーは海外出張が多く、会社を不在にすることも多くなったことに加え、テクノロジーの発達によりリモートワークの可能性が大きく広がりました。このような時代背景も私たちの決断を後押ししたと言えます」
前職は教師、警察官、心理学者、銀行員といったユニークなキャリアを持つ人材が集まり、その経験や専門知識は会社にとってまさに新しい風だったそうです。このような背景から生まれたシステムであるからこそ、時代の流れに左右されることなく、定着し、成果を生んできたとも言えるでしょう。